コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 〜暗闇の中の声〜⑦ ( No.107 )
- 日時: 2015/12/23 18:24
- 名前: 詩織 (ID: iV.IyZa1)
魔法の明かりの照らし出す坑道に、揺れる影が2つ。
コツコツと響く足音も、2人分。
けれど、目的地へ向かいひたすら歩く若者の姿が、そこには数えて3人分。
「ねぇ、どこまで行くのかな。」
ラヴィンが小声でこそっとジェンに尋ねる。
前を歩くジェンは更に前方の不思議な青年から視線を外さずに答えた。
「それはやっぱり、あの場所じゃないか?」
4人が突然魔法に襲われバラバラになった、あの場所。
「だよね。それにしても、歩くの早いねあの人。・・人?・・うん、人ってことにしとこう。」
「明らかに人じゃないだろ。ま、怖いならとりあえず人だと思っとけ。やっぱりあいつ、何か知ってるな。俺たちを待ってたのにも、きっと何か訳があるんだ。」
1番前を行くのは、栗色の髪をした青年の『亡霊』。
2番手にはジェン。シルファとマリーの為なら仕方ないと腹を括ったラヴィンだったが、さすがに亡霊のすぐ後は絶対に嫌だと言い張り、先ほどまでとは逆にジェンがラヴィンの前を歩いていた。
そんな彼の後ろに隠れつつ、ラヴィンも亡霊の後を追う。
ジェンの言うとおり明確な意思があるのか、亡霊は迷いなど微塵も見せずにただ前だけを見つめ進んでいく。先ほど4人でここを歩いた時よりも、かなり早い速度で通り過ぎて行った。
狭くなった場所や、急に広くなった場所を通り過ぎ、ついに例の場所までたどり着く。
「ここだ!私が滑ってシルファが手を貸してくれて。ジェンとマリーが集まってきて・・、突然地面が失くなったところ!」
ラヴィンの言葉を肯定するように、そこまで来ると亡霊はピタリと足を止め2人を振り返った。
「で?ここでどうしようっていうんだ?」
変わらず無言で2人を見つめるだけの亡霊に、ジェンが声をかける。
彼はしばらく無言のまま立っていたが、そのまま、ふっと視線を足元に落とした。
「そこに、何かあるの?」
ジェンの服を後ろから掴み、覗き込むように様子を見ていたラヴィン。
恐る恐る発した言葉に、亡霊は1度視線を上げ頷くと、再び視線を地面に戻した。
見上げるラヴィンにジェンは目で合図すると、彼女の手をとって亡霊へと近づく。
「どうすればいいん・・、わっ!」
亡霊に近づき声を掛けようとして。
再度『あの感覚』に包まれる。
「げ!ちょっとぉ!これじゃさっきと一緒じゃないっ!」
ラヴィンの声が響くがもう遅い。
さっきと同じくあっという間に、3人はその場所から姿を消していた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「いってぇ・・。」
小さく呻きながらその身を起こし、ジェンは思い切りぶつけた背中をさすった。
その横でラヴィンも腕をおさえて半身を起こす。
先ほどの様に意識までは無くしていないが、不思議な浮遊感を感じた後、突然どこか硬い地面へと投げたされたのだ。
「いったぁ〜〜。ちょっとなんなの。乱暴すぎじゃない?どこよ、ここ・・。」
「ラヴィンっ!?」
「え?」
打ちつけた腕を押さえ顔をしかめていたラヴィンだったが、突然聞こえた自分を呼ぶ声にハッと顔を上げた。
「シルファ!!」