コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ファリスロイヤ昔語り 〜 君に捧ぐ花の色は 〜 ( No.113 )
- 日時: 2016/01/03 19:23
- 名前: 詩織 (ID: aiwVW5fp)
ファリスロイヤ昔語り 〜 君に捧ぐ花の色は 〜
雨上がりの青空の下。
道端に、小さな女の子がしゃがんでいた。
マリーよりも、ずっとずっと幼い少女。
可愛らしいその小さな女の子は、昨日の雨でできた水たまりを覗き込んでいる。
映っているのは高く澄んだ青空と、こちらを見ている自分の顔。
少女が顔の向きを変えると、その金色の髪が揺れ、小さな赤いリボンが見えた。
それを見て、嬉しそうに笑う。
今朝結わえて貰ったリボンは、彼女のお気に入りだった。
「え?」
その時、水たまりに映る自分の後ろに、小さな人影が現れた。
かと思った瞬間、髪をひっぱられる。
「痛っ。」
するりとリボンが解ける感触。
振り返ればそこには、意地悪な顔で笑う小さな男の子の姿。
「ちょっと!何するの。返して!」
リボンを取り返そうと手をバタつかせる女の子。
けれど残念なことに、男の子のほうが少しだけ、彼女よりも背が高かった。
「やだね。取れるもんなら取ってみろよ。」
にやりと笑って手をあちらこちらと動かしながら彼女をかわす男の子。
だがその時。
「あっ!」
突然の風にさらわれて、リボンは空高く舞い上がる。
そのまま宙を彷徨ったあと、近くにあった木の枝の上にくたりと引っかかってしまった。
小さな子どもの手が届く場所ではない。
しばらく呆然とその様子を見ていた男の子は、ゆっくりと、気まずそうに女の子に視線を向ける。
「〜〜〜!」
眉を八の字にした女の子の、綺麗な紅い瞳にはあっという間に涙が盛り上がっていく。
今まさに、溢れる寸前。
「あちゃー。やっちゃったねぇ。」
目の前に映し出される世界を眺めて、シルファが小さく呟いた。
隣のラヴィンもあららーと苦笑する。
「この年頃ってなかなか素直になれなかったりするんだよね。ね、あの男の子、もしかしてあの女の子が好きなのかなぁ。かまいたくって意地悪しちゃうってよくあるもんねー。」
言いながら、何気なく後ろを振り返ると、腕を組んで前を見つめるトーヤと目があった。が、なぜか彼は黙ったまま、憮然とした顔でプイと横を向いてしまう。
「?」
どうしたんだろうと思いつつ、視線を前に戻すと。
ついに涙を溢れさせた少女が、真っ赤な顔で少年を突き飛ばすシーンが目に飛び込んできた。
「もうっ!なんでいっつもいっつもイジワルするの?だいっきらい!トーヤのバカぁ!!!」
思いっきり叫んで駆け出す女の子。
あとに残されたのは、道端に突き飛ばされて座り込んだまま途方に暮れる男の子。
「え・・。」
「トーヤって・・、トーヤ?」
目を丸くして振り向く彼らに、見られた本人、トーヤは苦虫を噛み潰したような顔で言い捨てた。
「ああ、そうだよ。昔の俺だ。ふん、どーせガキだよ。いっつもあいつ泣かしてばっかで。」
最初の無口で張り詰めた様子とは少し違う。
この微笑ましい映像を共有しているからだろうか。これが本来の彼自身なのかもしれない。
その拗ねたような口調に、思わずラヴィンは笑ってしまった。
(なんだ、怖くないじゃん、この人。)
今の雰囲気はまさに自分たちと同世代のものだ。
(生きていた時代が違っても、普通の男の子だったのかなぁ。この人も。)
ラヴィンがそんな事を考えている隣から、シルファが問いかけた。
「金色の髪に紅い瞳。あの女の子、その絵の子だよね?あの子が・・、『リーメイル』?」
「そうだ。あいつはリーメイル。女神の神殿で暮らしていた、俺の幼馴染だ。」
そんな話をする間に、場面はどこかの建物の中へと移っていた。
白い石造りの建物の、大きな部屋の扉が開く。
中にいた人々が一斉に外へと出てくるところだった。
緑の庭に面した廊下を、部屋から出てきた人々がぞろぞろと歩いていく。
よく見るとそれは皆女性ばかりであり、同じような白い布地のひらひらとした衣装を身に付けていた。
「あ!あの女の子。」
マリーが指し示す方をみると、そこには先ほどの小さな女の子が他の女性たちに混じって歩いていた。
うつむき加減で歩いていた少女・リーメイルはふと、何かに気づいたかのように顔を上げ立ち止まる。
そのままきょろきょろと辺りを見回した。
「トーヤ?」
少し離れた木の陰に、先ほどケンカしたばかりの幼馴染の姿を見つける。
近づいてきた彼女に、ぶすっとした顔のまま、トーヤは片手を突き出した。
「ん。」
「え?」
黙って突きつけられた彼の手を見て、リーメイルは目を丸くする。
そこに握られていたのは、風に舞った赤いリボン。
「どうしたの?これ。」
質問には答えずに、ただリボンを突きつける彼をまじまじと見るリーメイル。
よく見ると手や足にはいくつも擦り傷があり、服はあちこちに泥が跳ねていて。
「とってきてくれたの?」
あんな高い木だったのに。
「いいから。さっさとしろよ。いらねぇの?」
つっけんどんに言って、無理やり彼女の手にリボンを押し付けた。
「あ、ありがとう。」
慌ててリボンを受け取ると、もう一度彼の顔を見た。そして。
「ぷっ・・、あははっ。」
リーメイルは思わず笑いだした。
「なんだよ!せっかく取ってきてやったのに!いらねぇんなら返せよな。」
笑われて、トーヤは顔を赤くして怒る。
「だって。鼻のとこ、こすったでしょ。泥ついてる。あははっ、変なかお!」
「っなんだとこの!」
思わず片手を振り上げる。
けれどリーメイルの笑いは止まらない。
ほんと、素直じゃない。イジワルだし。すぐ怒るし。
でも、こういう優しいとこもある・・・んだけど・・言ったら怒るから、言わないもん。
クスクスと笑い続けるリーメイル。
「いい加減にしろよ、おま・・。」
「いい加減にするのはお前だ、このバカ。」
低い声とともに、トーヤの頭上から大きなゲンコツが降ってきた。
ゴツン。
かなりいい音が響く。
「い、いってー!」
「し、神殿長さま!」
頭を抱えて叫ぶトーヤ。リーメイルも笑うのをやめ、慌てて頭を下げる。
そんな彼らを上から見下ろして、神殿長と呼ばれた男性はふう、とため息を吐いた。
「トーヤ。ここの区画は巫女たちの祈りの間だからお前は近づいてはならんと、何度言ったら分かるんだ。また勝手に入り込んで。」
ふん、とトーヤはそっぽを向く。
怒られて、素直に謝れるような性格ではなかった。
「この。ちゃんと聞いてるのか。どうせまたリーメイルにちょっかい出しにきたんだろ、この悪ガキめ。」
言いながら、ふてくされているトーヤの耳を掴んで引っ張った。
そんな彼に向かって。暴れながら、トーヤが叫ぶ。
「いて!いてーって!なにすんだよ、このクソ親父!」
- Re: はじまりの物語 ( No.114 )
- 日時: 2016/01/04 15:41
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: hYCoik1d)
- 参照: http://www.kakiko.cc/mydesign/index.php?mode
こんにちは〜♪
小説大会の銅賞入賞オメデトウ御座います!!
やはり素晴らしい小説だなぁと感じました^^
文才が有る方は羨ましいなぁなんて思ってる自分も居ます(笑)
前、読んだ所から最新更新まで読みました。
やはりとても面白い小説で、設定も描写も全部素晴らしいなって思ってます(`・ω・´)
此れからも更新等頑張って下さい^^
また来ますね〜。
お邪魔しました(*^^)v
byてるてる522
- Re: はじまりの物語 ( No.115 )
- 日時: 2016/01/05 00:01
- 名前: 詩織 (ID: aiwVW5fp)
>てるてる522さん
うわっ!ほんとだ!
今てるてるさんのコメントみて知りました!
ありがとうございます〜。うわ、うれしい(^^)
どうもありがとうございます。
いやいや文才なんて・・うまく言葉にできない分、読んでくれる方の想像力任せで書いてるので、読み取ってくれた皆さんのおかげですね。
てるてるさんの小説も、てるてるさんの世界があって、読んでいるうちに入り込めてしまうのがとても楽しいです。
自分も出てくる子達の友達になったみたいで♪
こちらこそ、楽しみにしてるのでがんばって下さいね。
さて、モチベーションが上がったので次からもがんばります。
これからも、どうぞよろしくお願いしますm(_)m
- Re: はじまりの物語 ( No.116 )
- 日時: 2016/01/06 17:04
- 名前: 詩織 (ID: EZ3wiCAd)
読んでくださったみなさまへ(^^)
おかげさまで、ゆっくりペースではありますがここまで続けて書いてこれました。
ありがとうございます〜。
投票してくださった皆さんも、ほんとにどうもありがとうです!
私は楽しんで書かせてもらってるので、ちょっとでも一緒に楽しんでもらえたのなら幸せです。
うまく伝わってるかなぁ、設定変じゃないかなぁ?といつもドキドキです。
書いてみたい場面はイメージで浮かぶんですけどね、それを言葉で表現するのってなかなか難しい!語彙力が・・!(^^;
もっとうまく書きたいなー。
今回初めてちゃんとお話というものを書いてみて、つくづくそう思いました。
さて、これからは
トーヤ&リーメイルのファリスロイヤ組、過去編。
『あの日』、2人に何があったのか。
商人クロドとグレン公爵の陰謀、それに加担するユサファたちの真意。
そして王都のウォルズ商会組も、またまた参戦予定です。
ラヴィンとシルファの関係も・・少しは進展するのかなぁ。
マリーには幸せになってもらいたいですが。
そんなこんなで
次回からもぜひ、ラヴィンたちをよろしく見守ってやってもらえたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします(^^)