コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

マシュマロココア ( No.135 )
日時: 2016/03/21 12:01
名前: 詩織 (ID: 4M4hyAMx)

お久しぶりです!
更新、だいぶ間が空いてしまいました。

また寒い日が続いていますが皆さん体調は大丈夫ですか?
私は「りんご病」にかかってしまい、しばらくダウンしていましたよ〜。
風邪みたいに熱が出たり、だるかったりするんですけどね。
赤ちゃんがかかるやつだと思ってたのになあ。
赤ちゃんじゃなくてもなるみたいですね。

みずぼうそうとかみたいに、一回やればもうかからないそうですが、
私は子供の頃やってなかったようです・・。

おっきくなってからかかると4週間くらい長引くこともあるそうで、私もそんな感じでダルダル〜っとなってました。熱出るし(;;)
もうばっちり元気ですけどね。

皆さんも、気をつけてくださいね!インフルエンザも流行ってますしね。

ということで、久々なのでリハビリがてらショートストーリーをいれてみました。
ある寒い日の短いお話です。・・って書いたけど、文字数オーバーで①と②になりました^^;

本編もまた進めていきますので、よろしくお願いします!




〜 マシュマロココア 〜①


チリンチリンと入り口の鈴を鳴らし、店の扉が開く。
入ってくる人影を見つめていたラヴィンは、それがどこかの知らない少女たちだと分かると、思わず大きくため息をついた。

(シルファ、遅いなあ。)

テーブルの向かい、待ち合わせ相手の席は約束の時刻をとうにすぎた今も空っぽである。


街にできた新しいカフェ。
可愛くて女の子に大人気だと噂のその店に、どうしても行きたい!と誘ったのはラヴィンの方だった。

「珍しいね。ラヴィンがそういうお店に行きたがるなんて。」
えらく熱心に誘ってくる赤毛の少女に、シルファは目をぱちくりさせて返した。
「だってね、ここのマシュマロココア、すっっごく美味しいんだって!飲んでみたいんだよねぇ、それ。」
「マシュマロココア?」
「そう!あのね、あったかいココアの中に、マシュマロが入ってるの!それがふわんふわんでね〜。甘くって美味しいんだ。」

楽しそうに話すラヴィンを見て、なんか姉上みたいだなぁと思いながら、シルファは「へ〜」と相槌を打つ。
その顔があまり乗り気に見えなかったのか、眉毛をへにゃっと下げてラヴィンが言った。
「・・あんまり興味ない?」
「え?あ、いや、そんなことないよ!うん、いいよ。行こう。」
シルファの返事に、ぱぁぁっと笑顔を浮かべたラヴィンは、ひらりと二枚にチケットのようなものを取り出して一枚をシルファに差し出した。

「これは?」
「ふふふ。お店の招待券!」
「招待券?」
「そ。あの店がオープンするとき、うちの店からも色々材料とか道具とか卸しててさ。叔父さんが店長さんに貰ったんだって。でも、これ明後日までなんだけど・・予定どうかな。」
「明後日?」
シルファはうーん、と考え込んだが、やがて顔を上げて言った。
「たぶん大丈夫だよ。明後日なら忙しいのは昼過ぎまでだから。急いで用事片づけて行けば、お茶の時間には行けると思う。」
「そう?良かったぁ。じゃあお店で待ち合わせね。」
今からそわそわと楽しそうなラヴィンに、シルファもつられて笑った。


・・という一昨日のやり取りを思い出しながら。
ラヴィンは目の前のテーブルに視線を落とした。

丸っこくて可愛らしいカップには、ふわりと湯気の立つ茶色の飲物。
ふんわりと白いマシュマロの浮かぶ、この店一押しのホットココアだ。

(早く、来ないかなぁ。)
しばらくは注文せずに彼を待っていたのだけれど、さすがにずっと座っているだけというわけにもいかない。
仕方なく先に注文したココアが、ラヴィンの前に置かれていた。

さらにしばらく待っていたけれど、扉が開くたびに見えるのは知らない人ばかりで・・。
小さくため息をつくと、カップを口元へ運ぶ。
「・・冷めちゃうもんね。」
そっと呟いて、楽しみにしていたココアを飲んだ。

(おいしい。甘くって、トロトロだ。)
とても美味しかった。噂以上かもしれない。


でも。
でも、ね。


(・・一緒に、飲みたかったなぁ。)



(・・つまんないの。)



——— 結局、ラヴィンがココアを飲み終わってもシルファの姿は現れず、日も暮れかけて店内の客もまばらになったころ、ラヴィンは会計の為に席を立った。

店をでると、冷たい風が吹き付ける。
きゅ、とマフラーに顔を埋め、ラヴィンは帰り道を歩き出した。
最近は少し寒さが緩んだと思っていたのに、今日はまた一段と寒い。
粉雪でも舞いそうな寒さだ。
夕闇の街には街灯が灯り、その下を寒そうに人々が通り過ぎて行った。

(昼過ぎまでは忙しいって言ってたもんね。用事、終わらなかったのかな。)

シルファが平気で約束をすっぽかすような相手ではないことは、ラヴィンはよーく分かっていた。よっぽどのことがない限り、無断で約束を破るなんて彼に限ってあり得ない。
(大丈夫かな?)
ちょっと心配になったりもする。まぁ多分それほど大事はないと思うけど。なにか急用でも頼まれて、断れなかったのかもしれない。

(仕方ないよね。シルファ、忙しいもん。)

自分に言い聞かせながら、いつもの研究室兼彼女の生活場所である部屋へと帰る。

(それに・・私が無理やり誘ったんだし。もしかしたらシルファ、あんまり行きたいわけじゃなかったのかもしれないじゃない?)


部屋の中は静かだった。
ジェンとマリーは仕事で帰りは夜になると言っていたから、今いるのはラヴィン一人だ。
木枯らしがカタカタと窓を揺らすのを聞きながら、すっかり日の暮れた窓の外を眺めていると、なんだかちょっぴり、せつない気持ちになってしまった。

(なんかちょっと・・さみしいかも。)



「・・ココアでもいれよっかな。」
さっき飲んできたところだったけど。
こういう時は、あったかくて優しいものが飲みたくなる。
ひとり呟いて、ラヴィンはキッチンへとむかった。

マシュマロココア② ( No.136 )
日時: 2016/06/23 22:10
名前: 詩織 (ID: u5ppepCU)




小さな鍋にココアと砂糖と水を入れて火にかける。コトコトと温めながら、チョコレートのかけらを放り込んだ。トロリと溶けたところにミルクを足して、あとは沸騰手前でできあがり。
甘い香りが、部屋に漂う。
(マシュマロがあったらカンペキなのにな。)
そう、ラヴィンが思った時だった。


ドンドン、と勢いよくドアをノックする音。

「ラヴィン、いるっ?!」
「シルファ?!」
聞こえた声に、ラヴィンは慌てて火を消すと、玄関のドアを開けた。

「〜〜ごめんっ!!」
入って来るなり、思いっきり頭を下げるシルファ。
「昼の作業中に急なアクシデントがあって、どうしても抜けられなかったんだ。ほんとにごめん!!せっかくチケットくれたのに、間に合わなくって。」
ラヴィンがびっくりする勢いで謝りながら、シルファは申し訳なさそうに顔を上げる。


「用事は無事終わったの?」
「え?あ、うん。大丈夫。ちゃんと片づけてきた。でもこんなに遅くなっちゃって・・。」
少し息が荒い。きっとここまで走ってきたんだろう。
「そういうことなら、しょうがないよ。いいよ、私が行ってみたかっただけたから。」
ホントはすごく残念だってけど。あえて軽い感じで言ってみた。仕方ないのは、本当だし。怒ってみても仕方ないし。

(私が無理に誘ったんだもん。シルファは優しいからいいよって言ってくれた。仕事なら、しょうがないじゃない?)

なんだかちょっぴりもやもやもするけど、自分に言い聞かせるよう心の中でそう呟いた。


けれどラヴィンがそう思った時。

「ほんとにごめんね。あー悔しいな!僕もすごく行ってみたかったのにさ。なんであんなトコであんなミス・・」

思い出したようにぶつぶつと独りごちるシルファの言葉に、ラヴィンはあれ?という顔をする。

「シルファも行きたかったの?」
ラヴィンの言葉に、シルファは「え?」と首を傾げた。
「もちろんだよ。僕もラヴィンと一緒に行けるの楽しみにしてたんだからさ。今日だって、ホントはもっと早く片づけるつもりで朝も早起きして・・ってそれはいいや、結局ダメだったし・・。」

しゅんとした顔で視線を下げるシルファ。

それを見て。



(シルファも、行きたかった?)



(私と一緒に行くの、楽しみにしていてくれたの?)



ひたすら残念がっているシルファを見ていると、ラヴィンはなぜか、さっきまでの寂しい気持ちが消えていくのが分かった。
変わりに胸を占めるのは・・。

「ラヴィン?」
黙ったままのラヴィンに、シルファがおそるおそる呼びかける。
そんな彼に答えるように。
ラヴィンは、にっこりと笑った。

「もういいよ。」
「え?」
シルファの目を覗き込み、微笑んで言った。
「また行こう?今度は、ちゃんと一緒に。ね?」

(なんか、嬉しいな。)
一生懸命謝ってくれるシルファも、その後の彼の言葉も。
我ながらなんて単純なんだろうと思う。
でも、人間なんて案外そんなものだったりするのかも。

(今日はダメだったけど、また、約束すればいいよね?
「一緒に行こうよ」って。)

そう思ったら、なんだかほんわかとしたあったかい気持ちが溢れてきて、自然と顔が緩んだ。
そんな彼女の笑顔に、理由の分からないままなんだかドキドキするシルファだったが、ラヴィンは気づかずにこにこと彼を見上げていた。
「あ、そうだ。これ・・、ごめん。今日のおわび。受け取ってもらえるかな。」
我に返ったシルファが差し出したのは、可愛くラッピングされたお菓子。
透明な袋の中身は・・。

「マシュマロ?」
「そう。姉上がまた取り寄せたものなんだけど、甘くってすごく美味しいって。ラヴィン、甘いの好きでしょ?」
差し出された袋と彼を交互に見て、ラヴィンは「あ!」と思い出した。
キッチンにある、作りかけのココア。

「そうだ!ねぇ、シルファ。今から一緒に飲もうよ、マシュマロココア。」
マシュマロを受け取ると、シルファの手を引いてキッチンへ。
甘い香りのココアを再び温めると、そこにマシュマロを放った。

ハートの形の、真っ白いマシュマロ。
鍋の中で、ふわりふわりととろけてゆく。

「うわあ。面白いね。」
シルファが鍋を覗き込んで楽しそうに言った。
「ふふ。さあ出来た。はい、どうぞ。」
カップに注いで、彼に手渡す。
自分のカップにも注いだあと、マシュマロをのっける。ハート型の、可愛いマシュマロ。

「「いただきます。」」
2人して、湯気のたつあつあつのココアを口に運んだ。
「おいしい。」
シルファが驚いたように言う。
「マシュマロってこんなに溶けるんだね。僕初めて飲んだよ。」
「でしょ?」
得意げなラヴィン。
2人は顔を見合わせて笑う。
甘い香りの漂う、ほっこりとしあわせな時間。
「えへへ。」
ラヴィンは今日一番の満足気な笑みを浮かべた。

(よかった。一緒に飲めたね、マシュマロココア。)




「ただいま〜!あー寒かった。」
ドアの開く音と共に、玄関から可愛らしい声がした。
「あれ?なんかいい匂いがする。」
「お、ほんとだ。ラヴィン、なんかやってんのか?」
聞こえてくるマリーとジェンの声に、2人は笑顔をむけながら言った。

「お帰りなさい!」
「あったかいマシュマロココア、飲む?」


                             





                          〜おしまい〜