コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

ファリスリヤ昔語り外伝  〜 もうひとつの昔ばなし 〜 ( No.174 )
日時: 2016/09/28 10:38
名前: 詩織 (ID: m3TMUfpp)

ファリスリヤ昔語り外伝  〜 もうひとつの昔ばなし 〜



あの日。

最期のファリスロイヤ城で。


尽きようとしているひとつの命があった。



もう身体は動かない。

僅かに残された魔力で、彼は敬愛する兄へと最期の言葉を残す。


もう、自分は会いに行けないけれど。

この心は届くといい。

そう願いを込めて、乾いた唇を微かに震わせる。


世界の誰にも聞こえない、小さな小さな呟き。

魔力を伴ったその言の葉は、小さな鳥の姿となって空高く羽ばたいてゆく。


その姿を見送った彼は、安堵と共にゆっくりと目を閉じた。
黒いローブの下、銀色の髪が広がる。



------  僕はここに眠るけれど、


若者の口元が穏やかな笑みを形作る。


------  どこにいようと、ずっと兄さんを・・・僕らの一族を見守り続けるよ。



       肉体を失っても、あなたたちの目には映らなくなっても

       心はきっと、あなたのそばに寄り添っているから



一族をまとめ、敬愛する兄と共に立ち上げた新たな流派。

更なる飛躍を求めて、止める兄を振り切って出てきたことを今更後悔はしない。


けれど一つだけ・・


------ 急ぎすぎるな、と。必死で止めてくれたあなたを残して逝くことを

      どうか許してください・・・兄さん



彼の命の輝きが、消えようとしている。


------ 僕らの愛する一族を、どうか・・・・





若者は、意識を手放した  -------------------