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- 第15章 因果は巡る風車〜欲しかった強さ〜② ( No.198 )
- 日時: 2017/02/02 17:22
- 名前: 詩織 (ID: .WGhLPV.)
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「イルナリア?!お前、一体どうして・・」
完全に虚を突かれたユサファは激しく動揺した。
ギリアの屋敷にいるはずの娘が、なぜここにいるのか。
と同時に、ユサファの目は彼女の装束にくぎ付けになった。
「イルナリア・・まさか、それは」
「ええ、その通りですわ、お父様」
イルナリアが頷く。
「これは、私の覚悟の証です。どうかもう、無茶なことはお止めください」
イルナリアの美しく長い髪は高く結われ、両手足には銀細工に赤い宝石をあしらった装飾具。
けれどその装束は他の誰とも違う、漆黒の布地。
「姉上・・」
姉は身体が弱く、魔法使いとして鍛えられてもいない。
けれど彼女が今身に纏っている服は、着る人間の魔力を引き出し増幅させる為の魔法装束。発動させるのに技術はあまり必要ない代わり、出力のコントロールがとても難しい。つまり、暴走しやすいのが特徴だ。十分に訓練された者ならともかく、こんなものを姉がもし発動させたら・・。
「姉上?!ダメですそんな、何をする気で」
呆然としつつ叫ぶシルファに、イルナリアはせかすように言った。
「いいから早く!マリーちゃんを連れてこっちへ!」
叱咤するような姉の声に、戸惑いながらもシルファはマリーを腕にしっかり抱えると、口の中で呪文を紡いだ。
「っ!よせ、シルファ!許さんぞ」
そう声を荒げながらもユサファは妨害の魔法をかけることをしない。
黒衣を纏ったイルナリアの存在が、確実に、彼を動揺させていた。
荒れ狂う風と光の中、シルファは体当たりするように外へ向かって足を進める。
2人のまわりにはシルファの魔法によって防護の膜がかかっていたが、魔法陣の威力は凄まじく、シルファの身体には電流のような衝撃が何度も走る。
ところどころに裂傷を負いながら、けれどマリーだけ傷つけまいと必死でかばった。
魔力の壁を突き破るようにして、シルファはマリーと共に魔法陣の外に出る。
とたんに身体が軽くなり、たたらを踏んでよろめくと、走り寄って支えたのはイルナリアだった。
「早く部屋の外へ」
言いながらシルファを入口のほうへ押しやった。
「でも・・、姉上は」
「私は大丈夫よ。信じて」
強い姉の声に、シルファは大きくうなずくと、そのまま部屋の外へと駆け出した。
「待てシルファ!私に逆らうのか!」
追う様に一歩踏み出したユサファとシルファの間に、イルナリアは立ちふさがる。
その間にシルファの姿はユサファの視界から消え、足音は遠ざかっていく。
「・・イルナリアお前・・」
低く唸るような声で、ユサファは娘を睨みつけた。
「自分が何をしているか分かっているのか!!」
「分かっています。」
イルナリアは静かに告げた。
「私は、私のやるべきことをする為にここへ参ったのですから」