コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ぼくのかんがえたさいきょうの、ちゅーにびょー(ぼく中二病) ( No.14 )
- 日時: 2015/03/18 13:58
- 名前: ヒトデナシS ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
【8】
最強、チートキャラ、最弱。魅力的な肩書はこの世界に数少なく存在する。
もし仮に、僕にこのような肩書が与えられるとすれば、
【名前負け中二病主人公】、と言ったところか。
————チートキャラ、最強って何を指す?
負けない、
ダメージを食らわない、
敵わない、
強すぎる、
神。
————じゃあこの僕、『黒田 梨』に似た様に当てはめてみると、
喧嘩で負ける(僕喧嘩苦手だし非力だし)、
ダメージ(この学校での中二病のみ)を食らわない、
敵わない(敵に)、
強すぎる(敵が)、
人(むしろ最近神様にお願いした身分ですが何か?)、
改めて聞こう。僕の『中二病』は『現実』と呼ばれるアンチスキル。
さて、これだけ聞いても僕を誰がチートキャラとあがめてくれるだろうか?
「「うん、完全に名前負けっ(ふえぇ)!!」
「おいいいいいいいいいい、慰めてよ!? 僕頑張ってるんだよ!?」
満場一致。ここに【中二病名前負け主人公】の誕生である。
改めて話をまとめると、ただ黒田 梨は『中二病』を無効化出来るだけ。
さっきの貞道の『重力』も、田中先生の『デスビーム』も。ただそれだけ。それ以上の評価はない。
「……まぁそういうわけだ。田中先生、私に梨が付いている限り、貴様の中二病は無力だ。
肉弾戦に持ち込もうとしても無駄だ。梨はともかく、私はドラゴンを従える以上負ける気はしない」
龍同先輩は凛として言い放った。普通にカッコいいと思ってしまった。
その威圧に怖気づいてか、田中先生は押し黙る。そして観念したようにゆっくりと口を開く。
「……お前らの覚悟は分かった。だが、試験を中止するわけにはいかん。
その代りといっては何だが、テスト範囲を公開する、これで手を引け、龍同生徒会長」
「もうひと声。範囲は10ページ以内に絞れ、これが最大の譲歩だ」
「………………善処してやろう」
どうやらこれで、今月(今は5月)に行われる中間テストを掛けた戦争が締結したらしい。
教員達も、そして『中二病団』もようやくその場で一息吐く。
「……てか、僕達何してたのかな、本当」
ふと僕は麻痺した脳が現実に戻りつつあった。よくよく考えると確実に可笑しい。絶対。
昼休みに職員室を襲撃。定期試験を廃止しろなんて何をしてるんだ……。
「まー気にしなくていいんでない? テスト楽になるじゃん」
「焔は気にしなくてもいいと思うけどね……」
「こ……怖かった……ふえぇ……」
「お疲れ様絵美。怪我してない?」
「(コクコク)」
「よくやったな、梨、焔、絵美。貴様らのおかげだ」
4人でとりあえずねぎらい合う。何か妙な達成感に少し笑って、ちょっとした充実感を味わう。
なんだかんだで同じ戦場を駆け抜けた後の快感は、大きい。
————僕達は、こんな生活をして、生きている。
ここはとても普通と言える場所ではないけれど、皆楽しそうに生活している。
僕はまだ、約束した『悔いのない人生』を送れてはいない。
あの事故以来、ただ生きたいと願った結果、僕は未だ生きながらえている。
0から始まり、一から作られたこのヘンテコな中二病、『現実』という『無い』モノ。
この力しかない僕に、はたしてどんな高校生活が待っているのか。
そして僕は、そこで何を得ていくのだろうか。答えは未だ見えない。
でもいつかは、僕は胸を張って————
…………と、そんな良い雰囲気だったのだが、
「お前ら、退学とかは毎度ノリで言っているし遊びみたいなもんだから特に罰とかはないが頼みがある。
……死人を保健室に運んでくれ。殺したの、全員お前らだしな」
「「あ」」
田中先生に言われて、ふと一人だけ戦死した王様を忘れていた……————。
【でもいつかは、僕は胸を張って————
悔いのない人生だった、と言いたい。】
第1病、完