コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ぼくのかんがえたさいきょうの、ちゅーにびょー ( No.2 )
日時: 2015/03/10 22:28
名前: ヒトデナシS ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)



       【第一病、定期試験せんそー】



 「————初めに言っておく。これは戦争だ。遊びじゃない」


 とある一室で教卓の前に立つ少女は、目の前で円形に座る4人の『団員』に開口一番にこう言った。挨拶も無しに。

 しかも前に立つこの少女は、黒のポニーテールが印象的な、見た目は文句なしの美少女なのだ。
 言っている事と見た目のギャップが激しすぎる。
 表情はいかにも深刻そうだった。まるで大統領の会談だ。緊張感もある。

 ……のに、何故だろう。僕、『黒田 梨 (くろだ なし)』は妙に真剣さは感じない。


 「この戦いはこの学校で歴史に残る戦争になる。そうだな、名付けるとすれば————」


 誰もが息をのむ。その後の言葉の続きを言うのを待つ————




 「————名付けて、『定期試験撲滅戦争』だ。」

 「ちょっとまてえええええええいい!!!!!!」


 即座に声をあげた僕に他の4人の視線が集中する。

 「なんだ梨。さっそく質問か? よかろう、許そう」

 と、ポニーテール少女の許可を得る。が、

 「いや、質問と言えば質問ですが……なんというか」


 「さすがだね梨。俺には分かるよ。君の言いたい事」


 そう言って微笑んだのは幼馴染の『赤道 焔 (あかみち ほむら)』。赤髪が特徴的な僕の親友だ。
 さすが親友。この辺は長年の付き合いからか、僕のツッコみたいところが————



 「定期試験撲滅じゃなくて、教職員殺戮の間違いだ、でしょ?」

 「余計酷くなってるじゃないかッ!!!」

 やっぱり焔は相変わらずのゲス人間だった。


 「嘘嘘。冗談だって。本当はあれでしょ、まず小説での第一話はとりあえず自己紹介をして登場人物を知ってもらった上で話をしようよ、ってことでしょ?」

 「なんでメタ発言なの!? 焔は誰目線の話をしてるの!?」

 「えー、じゃあなに? 定期試験をなんで撲滅する必要があるのさ、僕って頭いいし超イケメンだしもうマジモテモテだから撲滅なんてしないで勉強すればいいんじゃね、ってこと?」

 「そうそ……、……いや、若干可笑しかったけどまぁ大体あってるよ」


 そういう事にしておこう。話が進まない。

 それを聞いていたポニーテールの少女、『龍同 妃香里 (りゅうどう ひかり)』は可笑しな発言を聞いたかのごとく首を傾げた。


 「?? 何を言うのだ梨。定期試験なんて、無い方が楽に決まっているじゃないか」

 「楽ッ……?」

 「貴様はそう思わないか? 『貞道』?」


 『貞道』と呼ばれる逆立った金髪の青年は鼻を鳴らした。名前は『王 貞道 (おう さだみち)』。
 どっかの野球選手と一文字違いだが、特に野球を愛好しているわけではない。
 ちなみに半そでの白のシャツに大きく【王】と書かれていた。自分大好きだった。


 「我は王ぞ。愚民の低レベルな行事の事など知った事か」

 「いや、テストに愚民も王様も関係ないと思うよ……。しかも貞道はここの学生だし……」

 「我の力量を計りきれないモノなど、存在する価値もない」

 「まだ赤点取った事、根に持ってるの?」

 「…………。ところで、龍同妃香里。おぬしは何が言いたいのだ?」


 僕の事は無視して話を続ける貞道。図星だなこいつ……


 「簡単な話だ。『王とは常識と概念に縛られない者。それすなわち自らが森羅万象を創造する者である事』こそ、王様であろう? 貴様ほどの男がたかが学校程度の常識に縛られるわけがないと思った訳だが」

 「む……。うむ。うむ。」


 龍同先輩(僕より一つ歳も学年も上)の流暢な説明に貞道も思うところがあった様だ。しきりに頷いている。
 まるでライオンを躾ける調教師の様に見える。


 「王ともあろう者、元々縛られているわけではないだろうが、それでもあっては邪魔なだけであろう?
  それを取り除こうとしているだけさ、定期試験という鎖を、さ。」

 「うむ。乗った。その戦争、王である我も出陣する。共に狂乱を楽しもうぞ」


 「待て待て待て待て待て待て」


 丸め込まれた貞道と龍同先輩の間に割って入る。このポニテ調教師手ごわいぞ。
 (ポニテはポニーテールの略称である。)