コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.1 )
- 日時: 2015/03/31 16:52
- 名前: 未来 (ID: Qvwcv6K1)
No 1 転入生
「神崎未優です。よろしくお願いします」
美しい黒髪を風になびかせながら挨拶した新しいクラスメイトに、教室内のほとんどの人間が見惚れた。
誰もが興味津津となる噂などの情報収集に長けている偵察係から「すごい美人」と耳にしていたが、予想以上の清廉で儚げな美しさに、男子だけでなく女子ですらも一瞬でノックアウトした。
「神崎さんの席は、窓際の一番後ろが空いているので、そこを使ってね」
担任の言葉にはいと短く返答して、1−1の転入生———神崎未優は着席した。
そうして、かつてなく騒がしい一日が始まった。
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「神崎さん神崎さん!私、相田真美!よろしくね!
困ったこととかあったら何でも遠慮せず言ってちょうだい!」
「あ、うん。ありがとう。
席も私の前だし、色々頼ることがいっぱいあると思う…よろしくね。
あっあと……未優、でいいよ…?」
初めは淡々と返してきたが徐々に恥ずかしそうに尻すぼみとなっていく言葉。可愛いものが特に大好きな相田真美は、凜としたイメージから打って変わってもじもじし始めそうな眼前の美少女に思わず抱きついてしまった。
「あああああ〜〜〜〜〜っ!なんでこんなかわいーの未優!?
あっ私も真美でいいからね!?改めてよろしくねー!
やったー私未優の友達一号だよー!!」
激しいスキンシップとうなぎ登りのテンションの真美にしばし呆けて戸惑っていたけれど、次第と笑顔になっていく未優に周りの生徒も話しかけていき質問攻めの休み時間となった。
慣れていてもやっぱり混乱するな、と思った。
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「みーゆー!一緒にお昼食べよ!」
「う、うん…!誘ってくれてありがとう、真美」
お弁当タイム。自称友達第一号の真美は数人の友達を連れて未優に声を掛けた。
「この子が噂の転入生だよね?
初めまして、私真美の友達の柏木玲奈。よろしく」
「斎藤優香でーす!よろしく!」
「よ、よろしくお願いします」
「なーに同級生に敬語使っちゃってんのよ未優!
よろしくでいいのよよろしくで!」
よろしくと言い直した未優は、戸惑いつつも若干顔が赤い。
玲奈はそれに少し違和感を感じた気がしたが、食事場所を探すため動き始めた三人を見て、それは無視することにした。
(この学校では、みんなに変に思われないようにしないと。普通の人でいないと。)
新しい学校での新しい友達に心底嬉しく思いながらも、緊張と恐怖で体が強張るのを抑えることは出来なかった。
そんな自分を見ていた二人のクラスメイトに、私が気付くことはなかった。