コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 私には、みんなには視えないものが視えている ( No.29 )
- 日時: 2015/12/03 22:17
- 名前: 未来 (ID: HHprIQBP)
No 13 抱える思い
無言のまま資料室に辿り着いた三人は、用意されている提出ノート用のダンボールに、運んできたノートを丁寧に積み重ねて入れた。
「これでよし…と」
気まずさから、言わなくてもいいことをそうやって言葉にせずにはいられなかった未優。
黙ったままだった二人も、それで幾分か話しやすい空気になったのか、聞かせるでもなくそれぞれ呟きを漏らした。
「終わりだな」
「案外時間掛からなかったか」
少しではあるが穏やかになった雰囲気に、未優はほぅと息を吐き出した。
(よかった…ピリピリしてたのがなくなってる)
今なら、訊くことが出来るかもしれない。
二人同じ場に居合わせてその中で話すことで、お互い胸に秘められた気持ちを聞くこと、誤解を解くことが、もしかしたら、もしかしたら———
「…ごめんなさい」
ぽつりと、無意識に謝罪の一言を呟いていた。
しつこいよね。踏み込まれたくないことだよね。
だけど、嫌だよ。
二人共、お互いを誤解したまま、嫌いなまま、終わってしまうのは。
例え嫌悪の眼差しを向けられようとも、言われたくない言葉を投げつけられようとも、それでもいいから。
私は二人の、楽しそうに会話する姿や、笑いあっているのを見るのが当たり前な日々を、送りたい。
これって、贅沢な願いだろうか。
「ねぇ、阿部君、仁科君……ちょっと、いいかな…」
出て行きかけていた二人が振り向き、眉を寄せた。
…怖い。
でも、ここで引くわけにはいかない。
決意が揺れ動かないよう、両手をぐっと握る。
数秒の沈黙。静けさに包まれる中、私は目を閉じた。
「二人とも、何があったの…どうしてそんなに、嫌悪し合ってるの?」
再び二人の元に意識が戻った開眼の瞬間、戸惑いを滲ませながらも、未優は斬り込みの言葉を言い切った。