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- Re: 最強次元師!!【2スレ目突入】 ( No.10 )
- 日時: 2015/07/26 13:11
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: u/FYQltH)
第307次元 作戦会議
「ではこれより、目前に控えた“第二次神人世界大戦”に於いての戦闘配置及び作戦提示を行う。あくまで我々上層部が独断で決めた事項であるが故に、君達戦闘部班には賛成反対の意を明確に示して欲しい。異論がなければ話を進めるが、心の準備は出来ているな?」
戦闘部班班長、セブン・コールの堂々として良く響く声掛けによって始まった、大戦に向けての作戦事項会議。第一講堂に集められた戦闘部班の次元師達に加えて、科学部班の班長フィードラス・エポールもまた中央に立つセブンに並んでこの会に出席していた。
「まず戦闘部班の四人の優秀な代表達、“英雄大四天”の動きから説明したい。知っての通り大戦の形式上、両軍の大将である人族代表と神族代表は、規定の時刻になるまで戦闘への介入を禁止されている。故にレトヴェールはその時刻になるまで身動きが取れない為、彼には全隊員への指令通達を任せようと思っている。言わば戦場に於ける指揮官を彼が担う訳だ」
「総員はレトヴェールからの連絡を受け取れるよう、通信機の破損には気を付けて欲しい。が、もしもの時は壊れてしまっても構わない。その場合近くにいる蛇梅隊の隊員と行動を共にする事を約束して欲しい。レトヴェールはどうだ」
「異論はねえ。進めてくれ」
「次に他の代表達だが、上層部で議論に議論を重ね結論を打ち出した。次元師代表の三人は他の神族と戦う権利を持つ。つまり向こう側の神族二体と戦う事になるのだが、フィードラス班長の助言によれば『ゴッドは12月25日の間、つまり24時間の中でしか能力を使えない』との事らしい。大戦開始はその少し前であるから、もしゴッドが代表であってもなくても、彼は0時を過ぎるまで無い者として考える事とした」
続けて、運命の神【DESNEY】が代表である可能性は低いだろうと結論付けた。彼は前線に上がってくるタイプではない上に、蛇梅隊の次元師を動揺させる為に心の神【FERRY】、つまりロクアンズを代表にしてくる可能性と、12月25日の間でしか戦えない神族の司令塔【GOD】を持ってくる可能性を考えた。両軍の代表は、丁度12月25日の0時より、一騎打ちでの戦闘を開始する規定となっている。先に大将を討った方が勝ちというルール上、ここで勝敗が決まってしまうのではないかと疑問の声も上がっているが、所詮“一騎打ち”というのは大戦中の一興でしかない。どちらかが軍を動かしてしまえばもう片方がそれに対峙して軍を動かす。よって再び全面戦争に陥るという形の想像は容易だろう。
セブンは『ゴッドとフェリーはどちらも可能性がある為、揺動の為にどちらも動かないのではないか』という仮説を立てた上で、英雄側の動きを次のように示した。
「間違いなくデスニーは序盤から仕掛けてくる事になる。そこで我々は、キールア・シーホリー単体で彼と戦う事を提案する」
「——!」
「はあ!? き、キールア一人でか!!?」
「待て。一人というのも大分問題だが、次元師として経歴のないキールアにいきなり神族と一人で戦えなどと、無謀すぎる提案では?」
「……納得のいく説明を要求する。一体どういう事だよ班長」
「これは俺からの提案だ、レトヴェール。サボコロ・ミクシーとエン・ターケルドという多大な戦力を、神族との戦闘ではなく向こうの兵器、元魔の討伐に充てたいと言っているんだ」
「親父……だったらキールアじゃなくて、サボコロかエンのどっちかをデスニーに充てれば良いだろ? 何だってキールアなんだよ」
「サボコロとエンを離すというのは、“両次元”の発動が出来なくなるという事。デスニーにそれだけ戦力を継ぎ込めば、瞬く間に他の次元師を犠牲にする事にもなりかねない。デスニーを侮っているんじゃない。寧ろキールアの実力を見込んだ上でもあるんだ」
「……でも、それじゃあ」
「——異論はありません」
「!」
聞き慣れた、芯の通った声が響く。いつにも増して真剣で、覚悟を決めたような声に震えはなかった。キールアの顔にも特に困った様子は見えず、真っ直ぐフィードラスを見つめて返す。
「キールア……」
「本人の承諾を得た。このまま作戦事項を伝える。良いな、レトヴェール」
「……勝手にしろ」
「さっきもちらっと言ったが、他の次元師の犠牲、つまり死亡は避けたいと思っている。戦争を行うにあたって犠牲はつきものだと思っているだろうが、今回はこの事項を第一に考えてくれ」
「ええと、つまり……誰も死なせずに、戦争に勝つって事? そんな事出来るの?」
「ああ。元魔は次元師にしか倒せないが、多いと厄介だ。蛇梅隊の次元師は元魔の討伐に慣れている為、率先して元魔の討伐にあたって欲しい。君達が死亡する確率は極めて低いが他の次元師はそうではない者もいる。普段の班を大戦用に再編成し、他の次元師を守りつつ元魔を討伐して欲しいという訳だ」
「ではチーム編成と、そのチームの行動範囲を伝えよう。基本三人一組で組んでもらおうと思っている。英雄大四天の四人を抜いて、隊員と副班長を足して十三人。そしてそこに——新たに二人加える」
「? それは、サボコロ君とエン君ですか?」
「いいや。それに彼らは二人一組で組んでもらうつもりだ」
「じゃあ一体……——」
カツン——、と。響いた靴の音に誰もが振り返った。
長い黒髪を一つに縛り上げた綺麗な顔立ち。横から顔を出して微笑む金髪ウェーブは畳まれ、女性は口元に扇子を携えてにこにこしていた。
レトヴェール達は嘗て、凛とした黒髪の女性に——『次会うのは戦場』だと言われ、英雄の名を授かった。
今正に、その女性が目の前にまで歩み寄ってきている。
「あー!? あ、あん時の!!」
「確か……刀を使う次元師、だったか?」
「チェシア・ボキシス——だろ? まさか蛇梅隊の次元師だったとはな……」
「覚えていたか、英雄レトヴェールよ」
「君達は見かけた事がないだろうが、彼女は一応蛇梅隊の“副隊長”だよ」
「ええー!? ふ、ふふ副隊長!?」
「だから苗字がボキシス、なのか! もしかして隊長の親戚とか?」
「ラットール・ボキシス総隊長の姪だ。叔父にはお世話になっている」
「なるほどな」
ラットール・ボキシス。彼は蛇梅隊の隊長であり、そして副隊長であるチェシアの叔父にあたるという。特別コネを使ったという訳ではなく、純粋に実力を認めて副隊長に任命したとか。可愛い姪の為を思ってもあるだろうが、チェシアの性格からして叔父にべったり甘えて裏口入隊、なんて事は一切なく、堅気で真面目な彼女が副隊長である事に異議を唱える者もいない。信頼された次元師だという。
「……流石に私の事は存じ上げていませんわよね。初めまして皆様、クルディア・イルバーナと申します。人族代表決定戦では運営委員として皆様のご活躍を拝見させて頂きましたわ。蛇梅隊隊員としては“総班代理”という役職についていますの」
「総班代理って……確か、全班長の代理人で重役会議にも参加出来るっていう役職だよな?」
「ええ。そうですわ。まあどの部班の班長様も大変優秀で堅実でいらっしゃいますから、私は殆ど“科学部班班長”の代理としてしか動いた事がありませんけれどね? 無責任で放浪男のフィードラス様」
「何の事だかさっぱりだよ、クルディア代理」
「まあ。全く不真面目なところはお変わりありませんのね。ご子息であられるレトヴェール様が貴方様に似なくて大変喜ばしい事ですわ」
「はは。お褒めに預かり光栄だよ」
「……」
「こらこら君達喧嘩しないの」
静かに言い争う不穏な空気を打開すべく、セブンは話題を切り替えた。チェシアは勿論の事クルディアも次元師だという事で、元いる戦闘部班十三人と合わせて十五人。これで三人一組が成立する。
「それじゃあ早速チーム編成に移る。大戦では常に行動を共にする事になるだろう。信頼関係を大事にし、より多くの元魔をそのチームで討伐してくれ。——では、発表しよう」
力強いセブンの声が、再び講堂を支配する。
新しいメンバーを加えてのチーム。二人一組だった今までとは違う。
不安を胸に、それでも自信を持って、次元師達は静かに耳を傾ける。