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Re: 雨の社 ( No.29 )
日時: 2015/03/28 21:20
名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: De6Mh.A2)



声のしたほうを振り返ると——まぁ予想は出来ていましたが、「あいつ」が歩いてくる所でした。


「……周」
これは救いの手なのだろうか、いやなかなかどうして間の悪い……

「いや、ちょっと見回りしててねぇ……」
最近俺はどうやら人の役に立っているみたいだぜ!などと
意味不明の事を言いつつ笑っていた。

——そんな事は今、どうでもいい!


「貴方は、この子と知り合いだったのか!?」
と、ちょこんと座っている小町を手で指し示した、すると、
当然だろう、という様子で——
「ああ、最近そこの茶屋で働くことになってな、偶にここで涼んでいるらしいぜ」
——そろそろ梅雨が明けるからな!!


続けて、
『ということで、小町、働いてます。周とも知り合いなの』

と、屈託のない笑みを浮かべ、彼女はそう言い放った。
まぁ、言いたいことは山ほどあるのですが、とりあえず——
きっ、と「彼」を睨み、


「あの部屋の有様は何だ周。整理整頓も忘れたのか」
「言われると思った!!……まぁ着物に着替えてただけよしとしてくれねぇか?」
ひいと肩を竦めたのもつかの間、やたら顔をきめて謎の主張をして来た。よしとするわけがありますか。

「とんだ間違いを犯したのではと思ったぞ、こっちは」
「……もしかして俺、監禁の疑いかけられてる?」
——言っとくけど俺はそんな手酷い真似はしないからな。

周は、ハッとからかう様に笑った。
冗談はあの部屋の状態を見てから言って欲しいものだ。


——言い合いをしていると、「彼女」が口を開いた。

『ねぇ、お取り込み中悪いのだけど、良かったら小町のお話を聞いてくれる?』
二人して顔を見合わせ、小町に目線を移す。何を言い出すのやら。
……とりあえず座って、と言い、ぺちぺち、と縁側を小さな手で叩いていた。


小町を真ん中にして、左側に私、右側に周が座りました。
よく見ると、なぜか後ろだけ極端に髪が短く、逆に両脇が長いという謎の髪型をしていた。
そして服装も、白い着物に真っ赤な帯という、なんだか古風な——私が言えた事ではありませんが——ものだった。
それも益々、小町の正体を分からなくさせた。この子は一体、
先ほどの発言が、頭を掠めた、直後。


『ではこれにより、小町のお話、はじまり、はじまり』

——妙に落ち着いた口調で、語りが始まった。
  日が暮れて来て、雨の音に、蜩の声が重なり始めた頃だった。