コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨の社 ( No.31 )
- 日時: 2015/04/04 23:52
- 名前: はにわ ◆MTo6zazpiQ (ID: Bl6Sxw0v)
「……で、ここに辿り着いた、っつー分けか」
話が終わったらしい。周がその後を引き継ぐように言った。
ええ、と小町。
「いやあ、俺は小町さんがここで働くってのは知ってたけど、
そんなとこから来てたのか、初耳だぜ」
感心する様に、身を乗り出していた。
大変だな、座敷わらしちゃんも。
「あら、そう?なかなか楽しいわよ」
そう言ってくすくす笑った後、
「……で、貴方はまだ見回りの仕事があるんでしょう?神様ならちゃんとしなくちゃ」
と、まるで子どもに言い聞かせるように、周を指差した。
……嫌な事を思い出した、という顔。
話を聞いてくれてありがとね。
手を振る小町。
へいへい。
渋々立ち上がる周。
そんな二人の様子を私は、妙な気分で見つめていました。
◆
周の姿が見えなくなって、しばらく立ちました。
「ねぇ、やっぱり小町の正体が気にならない?」
小町は縁側に裸足で立ち、私を見下ろしました。(まぁ、私が座っていたから出来た事ですよね)
……突然どうしたのか。
「こぉんなに気づいてもらえないと、小町寂しいなぁ」
へへ、とまた照れ隠しの様に笑い、
「せめて貴方には気づいて欲しいな」
そして、顔をこちらへ近づけてきて、
目を閉じて。小町は小声で、囁きました。
自分から正体を明かそうとする化け物はいないはずで、でもこの子に常識が通じる分けもないなと思った。
仕方なく、目を閉じて、
真っ暗になった。
ああ、雨の音が聞こえる。
「開けていいよ」
——幻覚かと、目を擦って、文字通り、狐に化かされたようになりました。
彼女の瞳孔は獣のようで。
二股に分かれた、尻尾。
頭部からあたり前の様に生えた、耳。
これが、違和感の正体であったのだ。
……子どもの様な、そうでないような、何とも面妖な。
私はやっとの事で口を開きました。
「化け狐、ですね」
現世にこのような妖怪がいようとは。
「そぉ、私は九尾の狐。まだ何年も生きてないから、尻尾は少ないけど、……へへ、そうだね。立派な化け狐よ」
「……お見事です。小町様」
「えぇ、どうしたの急に、照れるなぁ……あ、そんなことより、」
狐の尻尾と耳が付いて異形となっても、未だ無邪気な笑みは、出会ったときと瓜二つでした。
そして、私にまた近づき、
——急に、抱きついて、先ほどと同じように、囁きました。
「周には、内緒ね」
「……はぁ」
「秘密っていいでしよ?何だか。小町は貴方みたいな人に正体を明かしたかったの」
——反応がとおっても面白いからね!!
……その言葉に、異様に恥ずかしくなった。
体が、ぼっと熱くなるのが分かりました。
「……な、私はそのようなつもりでは、————小町様ァ!!」
今、鏡だけは最ッ高に見たくありませんッ……!!
そんな、私に。ああそろそろ行かなくちゃ、と言い放って立ち上がりくるりと向きを変えた。
貴方だけよ、貴方だけが私の正体を、しっ、て、る、の♪
スキップをして歌いながら、嬉しそうに。
てっきり夢のように消えてしまうものだと思いましたが——
……何事もなかったように、茶屋に入っていきました。
縁側で、手を伸ばしたままの姿勢で固まる私。
神様としてどうなのだろうか。
——案の定、帰って来た周に発見されました。
……ははぁ、狐にでも化かされたか?
そんな顔してさ、俺鏡持ってるんだけど見てみねぇか傑作だぞうわちょっとやめろなんで手を振り回すんだ危ないだろ鏡割れちゃうだろいや本当顔真っ赤だぜどうしたんだよおいだから俺を叩くなよせ