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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨の社 ( No.7 )
- 日時: 2015/03/19 22:04
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: De6Mh.A2)
◆
「……さ、そろそろお別れの時間だな」
惚けたように空を見つめる京に声をかけた。
忘れないでくれよ?そう言って大げさに笑ってみた。
そして、まっすぐ鳥居のほうを指差す。
「ま、歩いていけばこのままいつもの道に出ると思うぞ」
京は、うん、と頷いた。雨は、さぁさぁと降り注いでいる。
「よかったら振り返ってくれても構わないぜ?」
よいしょ、と革靴を履く京。その背中に声をかけた。
——はい、と言い掛けた、彼女は、ほんの少しだけ、笑って。
「うん。周の事、覚えておくから。ありがとうね」
ありがとうね。
それは優しい、生暖かい雨のような余韻を残していた。
京が向きを変えた。、決意の表れのように、真っ黒な髪とスカートを翻して。
そして鳥居へと歩みを進めた。俺はその姿をじっと見ていた。
ああ、人間の娘は強いんだなぁ。
少女——京が振り返ることはなかった。
そのまま、雨に護られる様に、姿を森へ溶け込ませていった。
雨が、止んでいく。じきに、周りの音も遠ざかっていった。
あたたかい光が、社をつつんで、眩しくて。
やはり、切なくなるほど綺麗だった。
——最後の、雫が跳ねる。
思いがけない、というか、
「通り雨ってのも、なかなかいいもんだな」
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