コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.10 )
日時: 2015/03/25 17:39
名前: 逢逶 (ID: FpNTyiBw)

episode9
title タブーが変わる

KISSTILLの元へと戻る。

大人の気配りができる人達でいてほしい。
中学生みたいに、何してたの?なんて問われたら返す言葉が無いし。

「…遅かったね」

「すいません」

「結城くんと付き合ってるの?」

え、
聞くんだ…?
慌てたように止めに入るメンバーをよそに、伊藤さんは質問を続ける。
害の無い人だと思ったのに…
迷惑だなぁ。

「…付き合ってるならそう言ってくれないと」

「付き合ってました。けど今はもう別れてますよ」

「ふーん」

納得してくれてない様子。

「…どうしました?」

不思議な態度に呆れながらも尋ねてみる。



「別れてるのにキスするの?」

返ってきた言葉に俯くしかなかった。
見られてた…?
そんなはずない。
襖は閉めていたし、あの部屋はどこか隙間から覗けるような危ない造りではない。

「ねぇ、蓮ちゃん…それ本当?」

「…」

なんて答えたら良いんだろう…
バレてしまった以上、言い訳は出来ない。

「蓮ちゃん…?」

「本当…です」

顔を上げられない。
五人がどんな表情かなんて、安易に想像できる。

「…でも、伊藤さんはどうしてそれを知ってるんですか?」

「…トイレ借りる時に、声聞こえてたよ?…もっと、って。それでリップ音?も聞こえたし」

「…」

「蓮ちゃん?結城くんと付き合ってないんだよね?」

どうやって答えれば良いの?

付き合ってます、と答えたらKISSTILLと食事しているのにその間に彼氏とイチャついていた失礼な女と見られる。
付き合ってません、と答えたら付き合ってもいない男とキスをした軽い女に見られる。

どっちにしろ、信用を無くすことになる。

考えろ。

嘘でいい。

考えろ。


「…付き合ってません。結城さんが私のことを忘れられないって、無理矢理キスされて…それ以上もされそうだったからそれは避けたくて…」

「だからあえてキスをねだって、それ以上をさせない手段に出たわけね?」

「…はい」

誤魔化せたかな…

知らぬ間に涙が出ていた。


「…泣かないで」

山田さんが私を抱き締めながら頭を撫でた。

私はその胸の中で静かに泣いた。
何故か涙が止まらなかった。


どうしてだろうね?


分かっていたら簡単に止められるんだろうけどさ。


ようやく涙は止まり、山田さんは安心そうな顔を見せた。
他の四人は悲しそうな顔で笑っていた。
同情…されてる。

「…すいません。空気乱しちゃって」

「いーや。小枝さんが悪くないって分かって良かったよ」

森さんが、微笑みながら言った。

いや、悪いのは私だよ?


「…私が悪いんですよ」

「え…?」

「すいません、帰りますね。失礼します」

急いで荷物を持って、店を出た。
あのまま居たって、何が悪いの?って問い詰められるだけ。

「待って!」

後ろから、声が聞こえた。
走ってくる足音。


「蓮ちゃん!」

山田さん…

息を切らしながら、私の手を握る。

「どうかしました?」

「急に出てかないでよ」

戻ろうと、私の手を引く山田さん。
力を入れて踏み止まる。

そんな険しそうな顔で振り向かれても…


「戻りません。私、帰ります」

「…忘れてる?」

「何をですか?」

「…あの時、手を握ったこと」

あの時…?

…あ、光が来る前に…

そうだ、見えないように手を握られた。

「…忘れてません」

「俺、何とも思わない子の手なんて握らない」

何言ってるの…?

「…?」

「恋愛で仕事の空気乱されるの嫌いだって言ったど…俺、蓮ちゃんのこと気になってる」



山田さんの真剣な表情に、何も言えなかった。


ゲーム攻略に近付いている。





山田さんは、案外簡単なのかも…


だって、山田さんの中のタブーが今、破れそうなんだから。