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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.11 )
日時: 2015/03/26 18:47
名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)

episode10
title 過去

「私…彼氏がいるので」

「知ってる」

「だから、好きにならないで下さい。困ります」

「…気になるって、遠回しだな。ごめん、訂正。…好きだよ」

「だから、困るって…」

「もう、止められない。本当は会ったときから惹かれてた…。だけど仕事はキッチリしたくて自分の気持ちから逃げてた」

「…」

「…結城くんとキスしたって聞いて、すんげ妬いた。だから言うことにした。好き。蓮ちゃんが大好き」

「…気持ちは嬉しいです。だけど、すいません」

断っておく。
本当は何をされても拒まないけど、軽く見られたら困るし。
彼氏がいるって設定も貫き通すつもり。


「…諦めないから」


黙ってその場を立ち去る。
何も言わない。
言うべきじゃない。


まだゲームは始まったばかり。



〝まだ終わらないよ?〟

ずきんっ…!

激しい頭痛。


記憶喪失とかじゃない。

記憶はある。だからこそ悩まされて、苦しめられている。



10年前…

中学二年生。
その日は、今日みたいに肌寒い日だった。

大好きな彼、景都と手をつなぎながら夕日が照らす細い道を歩いていた。

「家、寄ってかない?」

景都に対して少しの警戒心も抱いていないわけだから、首を大きく縦に振った。

広い家には誰もいなかった。
前にも来たことがあったし、きっと遊んで帰るんだろう、と無知な私はそう考えていた。

「蓮…」

景都の部屋、ベットの上で寝転がりながら漫画を読む私。
呟くように呼ばれた。

「なにー?」

真剣な、怖い顔をした景都がそこにはいた。
何があったのかと体を起き上がらせ問いかけてみるも、返事はない。

「…景都?」

「俺…お前のこと好き」

「え?知ってるよ?笑」

「だから、良いよね?」

突然、押し倒された私は口を塞がれて…

そのまま、初めてを強引に奪われてしまった。
好きだけど…怖かった。

幸せじゃ無かった。


その後も毎日のように家に誘われ、繰り返す行為。
最初は抵抗していたけど、どうでも良くなって人形のように無心で耐えていた。


そして、ある日…


景都に連れられ、いつものように家に行くと…

高校生くらいの男が二人いた。

「え!この子が景都の彼女?!マジ可愛いじゃん!」

「だろ、好きにしていいよ」

…もう、恋愛感情なんて無くなっていた。
男三人の相手をさせられ、更に感情を失っていった。
食事も喉も通らず、がりがりの骨と皮だけになった。


学校でもそんな私を気持ち悪がってか誰も私に近付かなくなり、孤立していた。

いつの間にか三年生になっていた。
あれだけ心弾んだ桜の綺麗なピンク色も、モノクロに変わっていた。
始業式、早めに終わった学校。
久しぶりに景都の家に行った。

景都の両親は家にいない。
長期出張中なのだとか。


服を脱がされた。
景都の顔が曇った。


「…なんだよ、お前…」

「…」

「なんでこんなに痩せてるんだよ!!俺は…てゆーか男は程よく肉付いているのが良いんだよ!今すぐ太れ!家帰って肉食って太れ!」

勝手すぎる…

溢れた涙は止まらなかった。


誰のせいでこうなったと思っているの…?

誰が私を壊したの…?

全部全部、景都じゃない…!

服を着て部屋を出る時、こう言われたんだ…


「お前の代わりなんていくらでもいるんだよ!」




この言葉で優しかった景都はわたしの中から消えて、残ったのは復讐心だけだった。




そして、数日後…部屋でお腹の下が痛くなって、病院へ搬送された。

医者はこう言った。


「…赤ちゃんがお腹にいました。…でも、流産されています」

景都の子か、あの高校生二人のどっちかの子か…
私は我が子が死んでしまった悲しさなんて感じなかった。
それよりあの三人の中の誰かの子供がお腹にいたことが嫌だった。
正直、安心していた。
子供に罪はないのに。

流産の原因は、主に食事を取らなかったこと。

知らなかったとはいえ、私は小さな命を殺した。

…自分を心底嫌った。


ゲームが始まった。


信頼と期待は捨てて、男を遊んで捨てるだけのオモチャと考えた。
どれだけ気持ちが楽になったことか。

光に会って、忘れていた男への優しい気持ちを思い出せた気がしたけどあっさり裏切られて。


私は何を希望に生きて行けばいい…?

神様…教えてください。



私はいつか救われますか…?