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- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.14 )
- 日時: 2015/03/28 21:50
- 名前: 逢逶 (ID: RnkmdEze)
episode13
title 大人
夢…?
心配そうに私を見つめるマネージャーさん達と…KISSTILL。
汗がにじんで、全身がひんやりした。
「蓮ちゃん?!汗すごいよ?!大丈夫?」
「あ…、危ないんで座ってください」
平静を装ってみる。
「…きゃー!って言ってたよ?!」
「知ってます…」
夢だとわかっていても怖い…
体が震えて、どうしようもなかった。
「小枝さんどうしたの?!」
「ちょっと…嫌な夢を見て…」
「どんな夢?!」
それ聞いて何になるの…?
私を救えるわけでもない。
お願い、近寄らないで。
何故だろう…マネージャーさん達の顔も、KISSTILLの顔も景都にしか見えない。
怖いよ…
震えは一層激しくなるばかり。
「蓮ちゃん?!」
「近寄らないでもらえますか…?」
すぐに震えを止めるから…
お願いだから…
…こっちに来ないで。
景都…
…来ないで。
私は、無意識にバックから薬の入った瓶を取り出した。
手に出して、飲み込んだ。
精神安定剤。
ふー…、落ち着け。
「すいません、取り乱して」
「いや…そんなことより何飲んだの?」
「…精神安定剤です」
「…それが必要になる状態だったわけね」
頭の良さそうな長谷さんに指摘され、素直に言ったことを後悔した。
「…そんなに強くない安定剤なので」
「じゃあ、そんなに不安定じゃなかったってこと?」
私の答えにすぐに山田さんが反応する。
「おい、蒼…アホだろ。小枝さんって頭良いからどんなことでも言える。だから
どんな夢を見たか教えてもらおう」
「そうだな」
え、
何この展開。
教える…?
嫌だよ…
「無理です。教える理由がありません。他人じゃないですか」
「いや、気になるでしょ。教えて」
私は俯いた。
教えたところでどんな雰囲気になるかは簡単にわかるし、好奇心で私の夢に触れようとしてくるその態度が辛かった。
「…聞かないでください」
「無理。教えて」
「嫌です…」
尚も諦めない。
「ったく、遼介!蒼!」
伊藤さんが怒鳴った。
「…大和?なに怒鳴ってんの?」
怯えたような山田さんと長谷さん。
「お前等にも聞かれたくないことあるだろ?!無理矢理聞いて何になる?どんなことでも受け止める自信あるのか?!」
伊藤さん…そういえば最年長だっけ?
私が言いたいことを全て言ってくれた。
「…ごめん、蓮ちゃん。ごめん…」
「俺は謝らねぇ」
山田さんは謝ってくれたけど…長谷さんは間違ったことをしてるとは思ってないみたい。
私の辛さなんてわからないくせに。
「…遼介。少し反省しろ」
伊藤さんは長谷さんを睨んだ。
いつものおっとりした雰囲気を感じない。
車内もピリッとしていて、なんだか落ち着かない。
「…あの、私のこと詮索しないでもらえますか?」
気付けば、そう口走っていた。
「どうして?」
「私のことは誰もわからないからです」
「ふーん、わかった」
「…」
「落ち着いた?」
「はい」
伊藤さんの優しさが心に染みた。
こんな感情久しぶりだ。
伊藤さんは、大人だった。