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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.16 )
日時: 2015/03/30 21:46
名前: 逢逶 (ID: FpNTyiBw)

episode15
title 崩壊

《もしもし?》

私の願いも虚しく、光の声が聞こえる。

「もしもし?ごめんね。北海道でロケしてて」

《そっか…。でも電源切ることなくない?》

「ごめん。光だと思わなくて」

《そう。明後日は会えるんだよね?》

「もちろん」

《わかった。電話くれただけで嬉しいよ。じゃあな》

「うん。じゃあね」



光…

怒ってた。

声から伝わってきた。

もう、おしまいだ。


「ねぇ、小枝さん…。光って結城くん?」


あ!
私…光って呼んじゃった。
もう、誤魔化せない。

「…そうです」

「…でもさ、無理矢理キスされて、嫌だったんだよね?」

「はい」

「それで…元カレで、今付き合ってるの?」

「…付き合ってないです」

「…彼氏って、言ったよね…?!」

「…どうでも良いじゃないですか!私に構わないでください!」

「おかしいじゃん!小枝さん泣きそうな顔してるしさ、助けてあげたいな、って…」

「そんなの迷惑なんです!私は…駄目な人間なんです!光にも、無理矢理されたわけじゃない!最初はそうだったけど、二回目は私が誘ったんです!」


伊藤さんだって…泣きそうな顔してるじゃん。


「…そ、なの?」

部屋のドアの方から声が聞こえて、見ると山田さんと長谷さんがいた。

「ねぇ!蓮ちゃん!本当なの?!」

ズカズカと部屋に入ってきた山田さんは私の前に立って、震える声で言う。

「本当です」

「嘘…嘘だって言って…?蓮ちゃんはそんな人じゃないでしょ?」

そんな人なんだよ…


「ほらな?最初から思ってた。こいつどっかおかしいなって」

長谷さんは鼻で笑って、私に軽蔑の眼差しを向けていた。

「…出てってもらえますか?私、お風呂入りたいんで」

「…わかった」


三人は部屋を出て行った。


「…風呂入ろう」

気分をどうにか変えたくて、風呂に入ることにした。
服を脱いで、シャワーだけ浴びた。

あぁ、気持ちいい…


マネージャーは続けられないなぁ…
水が、私の体を伝う。


途端に吐き気がした。

景都に、男に体を撫でられている感覚に似ていた。

トイレで吐いた。


今までの悲しみが、全て出て行くようで気持ち良かった。



だけど、記憶を辿れば辿るほどあの時の瞬間が鮮明に浮かんでくる。
私の子供が消えた日。

あいつらの誰かの子供がお腹にいるのが気持ち悪い、なんて自分が苦しくならないように必死に言い訳してた。

だけど…私は

赤ちゃんがお腹にいることに気付いていた。

つわりもあった。

気付いていた。


そして、愛着を持っていた。



でも食事は喉を通らなかった。



私は気付いていながらも殺してしまった。

どうしてあの時無理にでも食べ物を飲み込まなかったのか…


自分が嫌いだ。




あの時の記憶は、消さない。



だって、私の赤ちゃんは確かに生きていたから。