コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.22 )
- 日時: 2015/05/12 18:44
- 名前: 逢逶 (ID: 6k7YX5tj)
episode3
title 早すぎる再会
家路に向かう足を止めた。
シェフに会いたくなった…、
来た道を戻る。
シェフの元へかけて行く。
息を切らし、店内へ入った。
「いらっしゃいませ。って、え?」
シェフは、とても驚いていて。
「…え、どうしたの?」
シェフが私に近づいて、お客さんの視線もこちらへ向く。
「…あの、えっと…」
「外、出よっか?」
「はい…」
シェフの真っ赤な顔に目を合わせられなくなった、照れ屋な私。
店を出て裏道へ行った。
「…え、っとどうしたの?」
「…あの紙の、お礼が言いたくて」
「お礼なんて良いよ。俺も強引に渡しちゃったし」
「いえ、嬉しかったです。私の気持ちに気付いてくれる人がいて…嬉しかったです。本当に…ありがとうございます」
「…照れるなぁ」
「…」
「…名前聞いてもいい?」
「はい…。小枝蓮です」
「蓮ちゃんって呼んでもいい?」
「はい…私も名前聞いていいですか?」
「うん…。俺の名前は永江朔」
「朔さんとお呼びしても…?」
「…朔くんが嬉しいかな」
「朔くん。わかりました」
「うん。また、会える?デートしたいな」
「そうですね。時間ある時デートしましょ」
「…空いてる日ある?」
「いつでも大丈夫です」
「明日とかは…?」
「え…大丈夫ですけど、お仕事は…?」
「明日は定休日」
「そうなんですか。じゃあ会いましょ」
「うん、番号交換しよっか」
「はい」
番号を交換した。
「じゃ、仕事戻るね」
「はい。では、また明日」
「うん、ばいばい」
「さようなら」
私は歩き出した。
心はぽかぽか温かくて、この人とならって思えた。
裏切られ続けた今までを忘れさせてくれるような力強さを感じる人だった。
…なんてね、私を助けてくれる人なら誰でもいい。
私はもう、崩れかけてたんだ。
「…あれ、蓮ちゃん?」
…遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
どうして…?
「山田さん…」
私の目の前に立っていたのは、KISSTILLの山田蒼だった。
「…ちょっと、話したいことあんだ。一緒に来て?」
「嫌です…もう、関係ないですから」
「あやふやなことがありすぎるでしょ?」
「…」
腕を引かれ、どこかへ連れて行かれる。
帽子とマスクでしっかりと変装をした山田さん。
「…これからメンバーと食事の予定あってね」
「…」
黙り込んだ私を不思議そうな顔で見る山田さん。
話が弾むわけないでしょ。
「あ、ここ」
街外れの、小さな店。
こんな庶民的な店で大人気アイドルグループが食事…?
店内へ入り、案内された個室へ抵抗も出来ないまま連れて行かれた。
「…へ?!なんで小枝さんがいるの?!」
伊藤さんの気の抜けた声が部屋に響く。
「…連れて来ちゃった」
ぽりぽりと、わざとらしく手で頭をかく山田さんに四人は呆れ顔。
そうだよね…折角の食事なのにね…
「…座って」
「…」
無言で椅子に座った。
「…結城くんとは順調?」
伊藤さんは運ばれて来た料理を口に入れながら言う。
「まぁ…順調です」
「だろうね、マークついてるし」
マーク…?
意味がわからない私に、伊藤さんは苦笑いをしながら首を指差した。
「…あ」
キスマーク…
「…へぇ、マネ辞めて男と遊んでんだ」
「…関係ないです」
「まぁ、そうだね」
何事もなかったかのように食事するKISSTILLに、腹が立った。
「…で、結局何が言いたいんですか?」
「…まぁまぁ。そんで?結城くんとは付き合ってるの?」
「いえ…」
「へぇ。付き合ってもないのに…そんなこと出来るんだ?」
「出来ますよ」
「結城くんのこと好きなの?」
「好きじゃないです」
「結城くん以外に、そういう関係の人はいるの?」
「最近会ってませんけど、いますよ」
「…へぇ」
…何かを探るように、私への質問は続く。
伊藤さんとしか話してないけど…、
他の四人の目も本気だった。
二度と会いたくなかったこの人達。
早すぎる再会。
私は、落ちて行く。