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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.25 )
日時: 2015/04/10 21:25
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode6
title されるがまま

今日はKISSTILLでの収録が三本。
山田さんだけが、二本。

現在、収録中。

持ち前のトーク力で、存分に盛り上がっているスタジオ。

…マネージャーさん達は私に普通に接してくれて、心地悪くは無かった。

「…ね、小枝さん…ちょっと出よっか」

「…でも収録」

糸村さんは、いいから、と私の手を引いてスタジオを出る。


「…どうかされましたか?」

「…えっと、マネージャー戻ってきたのはどうして?」

「戻ってきてほしい、と言われたので」

「…じゃあ、そもそもマネージャーになった理由は?」

「仕事が無かったからです」

「…やる気あるの?」

「やる気あるから戻ってきたんですけど」

「辞めた理由は?」

「私は必要ないと思ったので」

「…本当はもう一度戻ってこれると思ったんじゃない?たった数日で戻ってきて。辞める時の覚悟はそんなもの?…小枝さんにはもう少し覚悟を持って欲しい」

糸村さんの言っていることは正しくて、反論する気はなかった。
私が謝れずに俯くと、糸村さんは大きく溜息をついた。

「…小枝さん、俺の言ってることわかる?」

「はい、わかります。すいませんでした」

目一杯頭を下げた。

「…謝らないでよ。怒ってるわけじゃないし」

私が頭を上げると、糸村さんはぎこちなく私の頭を撫でた。

「…」

「…言い忘れてたことがある。…俺は小枝さんのことが好きだよ」

目を見開く私。
穏やかな表情なのに、感情が見えない糸村さん。

「…それは、」

「もちろん恋愛感情。あんな言い方したけど内心小枝さんが戻って来てくれて嬉しいんだ」

…二人目。

私はゲームに浸かっていた。
今でも…、落とせたという興奮が渦巻いておかしくなりそうだ。

「…返事とか、いいから。彼氏いるのはわかってるし」

「…いませんよ」

私は咄嗟にそう言った。
…糸村さんの気を引こうともがく自分がいる。

「…この状況で彼氏いないって言う?俺、期待しちゃうな」

「期待しても良いですよ?」

瞬間、糸村さんは私を抱き寄せて優しく口付けた。
受け入れるのは、糸村さんを嫌っていないから。
テレビ局の廊下だということを忘れて、しばらく降り注ぐ唇に酔いしれた。

誰もいない廊下は、気分を高ぶらせて行く。

「…あ、やばいなぁ。続きしたくなっちゃった」

「…駄目ですよ。続きはまた今度」

頬を火照らせ、私を熱い視線で見つめる糸村さんにお辞儀してスタジオに入った。

収録はまだ続いている。
何も知らないKISSTILLは楽しんでいた。


収録は無事終わり、次の現場へと移動する。

車内は静かで、山田さんの疲れが伝わった。


「…蓮ちゃんさ、糸村と何してたの?」

急な質問。
仕事中も周りの状況を把握しているんだ…。

「…何もしてませんよ」

そう言うしかなかった。
納得してもらえないだろうけど。

「嘘つかないでよ」

「嘘じゃないです」

「…具体的になに話してたの?」

「仕事の話とか…?」

「なんで疑問系なんだよ」

「…さぁ」

「…あ、トイレしたい。コンビニ寄って」

時間は無いが、コンビニの駐車場に車を停止させた。

「後ろ来て」

トイレしたいんじゃないの…?
言われた通り、後部座席に移動する。

「…糸村とキスしてたんでしょ?」

「…」

「言わないなら」

そう言って引き寄せられて、半ば強引にキスをされた。
受け入れるしかない。

私は、そのままキスを続けた。

体ががカタカタと小刻みに震える。
激しいキスは…、景都を思い出す。
だから、嫌い。



…されるがまま。