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- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.29 )
- 日時: 2015/05/12 19:02
- 名前: 逢逶 (ID: 6k7YX5tj)
episode10
title これでいい
森さんは家に入りソファーに座った。
「何飲みますか?」
「ブラックコーヒーある?」
「はい」
「じゃあお願い」
ブラックなんて飲むんだ。
私には苦くてどうしても無理なブラックコーヒー。
男の人は結構ブラックが好きな人が多くてストックしていた。
粉を入れてお湯を注ぎ、森さんの前に置いた。
「どうも」
「いーえ」
「…蓮はさ、告白とかしてないの?」
コーヒーにふーふーと息を吹きかけながら上目遣いで問う森さん。
その目は私の心を見透かしているようで怖い。
「…してません」
「しなよ。恋愛って結構簡単に動くから」
…それは森さんがモテるからでしょ?
気持ちを動かしたくたって出来ないこともあるんだよ。
「…いいです」
「その好きな人は蓮に全く気がなかったの…?」
そんなことないと思う。
だって現に、好きになりそう、って言われたし。
「…わかりません」
「でも蓮はその人に期待していたから会いに行ったんでしょ?」
「…」
図星すぎて何も言えない。
心の中では、もしかしたら…って思ってたから。
「蓮をその人は突き放した?」
涙を抑えながら首を横に振った。
「じゃあ、告白しなよ」
「…奥さんがいる人に告白なんてできない」
私は他人の家庭を壊せるほど強くない。
「…気持ちを伝えることは大事だよ」
「…わかりました」
私は携帯を取り出し、朔くんに電話をかけた。
すぐに朔くんの声が聞こえて、少しだけ期待してしまう自分がいた。
「もしもし」
《もしもしー。蓮ちゃん?…さっきは突然ごめんね》
「いえ、嬉しかったです。私…好きでした。朔くんのこと」
《え…》
「朔くんは気持ちだけわかっていてください」
《俺だって蓮ちゃんのこと好きだよ》
「…でも私、朔くんとは付き合いません。奥さんに罪はないし、不倫なんてお互い寂しくなるだけですから。朔くんは…奥さんを大切にしてあげてくださいね」
《…うん。蓮ちゃんがそれでいいなら。もう、会わない。じゃあね、ありがとう》
電話を切る。
なぜか涙が出てこない。
思っていたより辛くない。
朔くんへの気持ちが弱かったとかそういうことじゃなくて。
初めて正しいことをした気がして、嬉しさもあった。
「…泣かないの?」
「泣きませんよ笑」
「…失恋したら次に進まないと。だから、俺なんてのはどう?」
「冗談やめてくださいよ笑」
「冗談じゃなくてさ、今すっげー蓮を抱きしめたい」
「…」
「遊びでもいい。俺のこと利用しなよ」
「そんなの申し訳ないです」
「俺が良いって言ってんだから」
「…」
「…俺、蓮のこと好きだよ。正直朔って奴にも妬いてるし」
「…私なんかを好きになってどうするんですか?私は…、汚れてるんですよ?朔さんを想っていても、誰かと体を重ねることができる」
「じゃあ、確認させてよ」
私は床に押し倒された。
本気だ…。森さんは男の表情で、私を見下ろす。
無抵抗な私の首筋に舌を這わせ、服を脱がして行く。
これでいい。
森さん…私を嫌いになって。
好きでもない人とこんなことが出来る私を早く嫌いになって。
見捨てて。
…傷は塞がっていると思っていた。
朔さんに出会って、恋をして。
だけど想像以上に深かった傷は、まだ血を流している。
これでいい…?
本当に…?
森さんとして…、何か成長する?
忘れられる…?