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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.30 )
日時: 2015/04/21 21:00
名前: 逢逶 (ID: oc2mnTQ1)

episode11
title 不気味な笑顔

森さんの手が私の体に伸びてくる。

「ぃ…やっ」

反射的にその手を避けた。

「…やっぱりできないんじゃん。蓮はそんな子じゃないもんね」

森さんはにこりと笑って、私を起き上がらせた。

「…蓮は、結城くんと付き合ってるの?」

「遊び相手ですよ…?」

「ね、やめなよ。あんな人。自分勝手でさ、振り回されない?」

「…他人の悪口言うのはどうかと思いますけど」

「俺だって言いたくないけど、蓮のために言ってる。もう会うのやめなよ」

「…光は優しくてあったかくて、良い人です」

「そう?付き合ってたならわかるよね?結城くんが本当はどんな人だか」

「…」

「何も言えないじゃん。それが答えでしょ?もう、結城くんはやめなよ。蓮のことは俺が満たしてあげるから」

サラッともの凄いことを言われた気がする。
冷めかけたコーヒーを啜る森さんは心なしかいつも以上にかっこ良く見える。
だめだ。
すぐに辛くなる。そして、傷つくことをわかっていて…ゲームに走る。
いっそ吐き出してしまえたら。

この人になら…、そう考えたけどすぐに冷静になる。
もし、今目の前に森さんじゃなくて他の男の人がいたら。
同じ気持ちになってる。
きっと、誰でも良いんだ。

「…ごめんなさい。森さんに頼るわけにはいきません」

「今の蓮には誰かが必要でしょ?俺じゃなくてもいいと思うけど、それでもいいよ。俺は、蓮が必要だから」

必要…、私はこの言葉に異常に執着している。
必要と言われると心が揺れるし、その気になってしまう。

「…」

「考えといて。そんで連絡ちょうだい」

「…はい」

森さんの携帯番号は仕事のために一応知っているけど、一度も連絡したことはなかった。

「…じゃあ、ね」

「はい」

森さんが立ち上がって玄関に向かう。
その背中を見ているだけの私。

見送りもしないなんて最低だな。
その日は風呂に入る気すら失せ、汗臭いまま眠りについた。

翌朝、当然体がベタベタする。
このままでは仕事に行けない。


…あ、今日は休みだった。


久しぶりの休暇に、だらだらと重い体を動かしてバスルームに向かう。
服を脱いでシャワーを浴びる。
久しぶりにこの幸せを味わった気がする。
全てが洗い流される感じ。

景都に汚されたあの日から、風呂に入っている時間は少しだけ綺麗になった気がして。
ただの自己満足なんだけど、私には休息が必要なんだ。

風呂から出て、下着のまま部屋をうろつく。
凄くだらしがないと思うけど、バスタオルと着替えの服を出し忘れたためやむおえない。

スウェットを着て、ソファーに座る。
ぼふっという音とほぼ同時にインターフォンが鳴る。

嫌な予感がする。
宅配便かもしれない…、でもなんとなく違う気がする。

がちゃ、とドアが開き入ってきたのは…




…光だった。




鍵閉めとけば良かった、そんなことを思ってももう遅い。





「また鍵閉め忘れてる笑」


光の不気味な笑顔に背筋がぞくっと震えた。