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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.31 )
日時: 2015/04/25 13:10
名前: 逢逶 (ID: L3izesA2)

episode12
title 自分勝手

「光…」

「おはよ」

「おはよ」

光は私の隣に座って、私を抱き寄せた。
その腕には少し力が入っていて苦しい。

「どうしたの…?」

私の問いには答えず、光はそのまま私を押し倒し怪しげな瞳を向けた。

「…しよ?」

私の返事を待たずに、光は服を脱がし始めた。

「待って。風呂入ったばっかりだから…」

「えー、いいじゃん」

…光、


怒ってる。


抵抗しない方がいいけど…、でもやっぱりしたくない。


「…だめ。今日は本当に」

「…森さんと付き合ってるから?」


は?何言ってるの?

「俺、見ちゃったんだよね。森さんと一緒に歩いてるの」

「…」

「付き合ってるんでしょ?…俺も蓮と付き合ってたよね?!」

「付き合ってない!勘違いしてただけでしょ?!」

「遊びだったわけ?!」

「そうだよ!」

ぱちんっ


光の手が力強く私の頬をはじいた。

痛さより悲しみの方が大きくて、そのまま俯いた。


「…俺ねお前のことすんげー好きなの」

「…私は好きじゃない」

「…」

「森さんとも付き合ってない」

「…ねぇ、怒るよ?」

「もう怒ってんじゃん」

「俺のことなんとも思ってなかったわけ?」

「うん」

「付き合ってる時も?」

「うん」

…やばい。
殴られる。

光の拳が飛んできて私は倒れこんだ。
口からぽたぽたと血が垂れてくる。
じんじんと痛む顔。
光は何やら怒鳴っているけど内容が頭に入ってこない。
ぼーっとする頭で必死に何かを探ろうとする。
その何かも曖昧なまま、意識は虚ろになっていく。

「しねよ!」

もう一度殴られ、視界が揺れた。
そして意識を手放した。


あ、れ…?

私の手の中には可愛い赤ん坊がいた。
ここは天国…?
私が殺した私の赤ちゃん…?

すやすや眠る赤ちゃんにはしっかり重みがあって、この手の中にいることを幸せに感じた。

やっと会えたね、私の赤ちゃん。

長いまつ毛。丸くて小さな鼻。ぷっくりとした唇。白い肌。
…私の赤ちゃん。

私の赤ちゃん。

私の赤ちゃん。


涙が出てきて、声をあげて泣いた。

赤ちゃんはゆっくりと目を開けた。


大きな瞳が私を見る。
あぁ、私に似てる。

私は赤ちゃんの頬に自分の頬をすりつけた。

光に殴られた傷は無くて、温もりを感じていた。

「愛してる」

私は赤ちゃんに向かって呟いた。
そしたら…、にこって笑ったんだ。

愛しい。愛しい。愛しい。



産んであげられなくてごめんね。




一人にしてごめんね。



「ずっと一緒だよ」

私がそう言うと、赤ちゃんの表情が曇った。
涙を浮かべ、声にならない声をあげ…、何かを必死に訴えていた。



戻っておいで!

遠くから声が聞こえた。




辺りを見渡しても誰もいない。




マネージャーだろ?!



この声は…山田さん?


え…?


気付いたら赤ちゃんは消えていた。



私の腕の中にいたのに…。


嫌だ!嫌だ!嫌だ!



私は大声で泣いた。



「蓮!」


私は目を覚ました。




夢…?


赤ちゃんは…、いない。

真っ白な天井。
ベッドの周りにはKISSTILLとマネージャーさん達がいて、何があったのか瞬時に悟った。

病院か…



私は再び目を閉じた。


赤ちゃんにまた会えるかと思って。


なのに、


「蓮ちゃん!」

私に抱きついて邪魔をする。




私は、赤ちゃんに会いたいのに。

光より自分勝手だ。

心配してくれてるのにね。



でも、私にはあの温もりが必要なの…。