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- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.32 )
- 日時: 2015/05/12 19:09
- 名前: 逢逶 (ID: 6k7YX5tj)
episode13
title 気付いて
どうやら私は一週間目を覚まさなかったようだ。
仕事に来ない私を不思議に思い、山田さんが訪ねて来てくれたそうだ。
「ご迷惑おかけしました」
「うん。蓮ちゃんね、顔と頭の骨にヒビが入っててね。手術したんだよ」
そうなんだ…。
光が力任せに殴るからだ。
「誰にやられた?」
森さんが尋ねる。
言えない…。
だって、光は森さんのドラマに出演していて、言ってしまったらキャストは変更になるし、そんなことしたら放送に間に合わなくなる。
…言わないのが正解だと思う。
「…今は言えません。色々終わったら言います」
「…結城くんはクランクアップしたよ」
…気付いてる。
私が言わない理由も、誰が私にケガをさせたのかも。
森さんにはお見通しみたい。
「光ではないです」
「蓮って嘘下手なんだね。結城くんなんでしょ?別に降ろしたりしないから」
「…はい」
「だから言ったでしょ?あんな人やめといた方がいいって」
「…」
森さんは私を心配する様子はなく、私を冷たい目で見下ろしている。
他の四人とマネージャーさん達は、ベッドの下にしゃがみ込んでいるのに。
「ねぇ、蓮。もっと頼ってよ」
「そうだよ。蓮ちゃん。もっと頼って?一人じゃないじゃん」
「あの状況では頼れなかったんです。これは私と光の問題だから」
関係ない人が入って来て、解決できる問題じゃない。
恋愛感情の歪みは、そう簡単に元通りにはならない。
私と光の場合は特にそう。もう、戻れない。
「じゃあ、俺はここで失礼するわ。かし、行こ」
森さんと柏原さんが帰って行った。
…私のこと好きなんだよね?
そう疑問に思うくらい森さんは普通で。
「…森さん怒ってますかね?」
「いや、あれは相当心配してるね」
そ、うかな?
メンバーが言うなら、と納得させる。
山田さんが私の手を握ったまま眠りについている。
忙しいんだろうな…。
「…蒼、小枝さんのこと心配して全然寝てないからね」
伊藤さんは悲しい瞳を私に向けてそう言った。
私が山田さんの睡眠時間を削ってしまった申し訳なさより私を心配してくれた嬉しさが勝ってしまう。
被害者ぶりたいのかもしれない。
ベッドの淵に手をかけ起き上がる。
用意されていたスリッパを履いて、窓の外を眺めた。
なんだろう、あれ。
カメラを持った人が病院の建物の周りに群がっていた。
…記者だ。
私は全てを察した。
KISSTILLが病院に入って行くのが目撃され、なんらかの形で記者に伝わった。
そして…、どうして病院にいるのかもバレている。
「…すごいよね。伝染力というか」
糸村さんは私の隣に立って、少し呆れたように言った。
忘れちゃいけない…。
この人は私にキスをした人。
「…そうですね」
警戒心をなるべく見せないように答えた。
きっと私の手が震えていたのは気付いていない。
私が助けを求めているのも気付いていない。
…私が、死にたい、と思っているのも気付いていない。