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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.33 )
日時: 2015/04/28 21:46
名前: 逢逶 (ID: 6k7YX5tj)

episode14
title 崩れる

「もう来ないでください」

私はそう言い放った。
失礼なのは承知だ。
私を心配して来てくれてるのに、突き放す。
でもまた来てしまったら記者も付いてくるわけで、他の患者さんや病院自体にも迷惑がかかる。
そして何より…、私がこの人達に甘えてしまいそう。
そんなの許されない。

「…わかった。じゃあ、明日からは来ないけど寂しくて泣かないでね?」

「はい」

私の言葉の意図を理解してくれた中島さんが私に向かって微笑む。

「…じゃあね」

山田さんは落ち込んでいて、長谷さんが肩をぽんっと叩いて励まそうとしていた。
その横で伊藤さんがその光景を眺め、にやっ、と笑う。
長谷さんは私を睨んで病室を出た。

戸部川さんと里崎さんは、二人を追いかけて行った。

残ったのは伊藤さんと糸村さん。

「…小枝さんの言いたいことはわかった。そんでー、一個聞きたいことがあるんだけど…、結城くんは前から暴力とかあったの?」

伊藤さんの真面目な質問に、視線を逸らした。
病室のカーテンがゆらゆらと揺れて、傷の痛む頬を触った。

「…暴力はありましたけど、今までは軽いケガで済んでいました」

無機質な病室は空気を張り詰めたものへと変える。
後ろで組んだ手が震える。

「…小枝さんの男グセが悪いからじゃないの?」

…え?


糸村さんから発せられた言葉は凶器となって私の心を痛めつける。
もともと、精神はあまり強くない。
強くなったふりをして生きてきたことは自覚している。
男の人に触れられて平気だったことなんてない。

そんな私の脆い部分を狙ったかのように指摘する糸村さん。
その瞳は軽蔑に満ちていて、私とキスしたことを忘れてしまっているように見える。

「…聞いてる?」

「聞いてますけど」

「誰とでもできちゃうんでしょ?彼氏が不安になって暴力に走っちゃうのもわかるけどな」

「…」

…私が悪いって言いたいの?
私の男グセが悪いから…、光が私を殴ったことに罪はないって?
…そうだとして、私の男グセが悪くなったのは誰のせい?

景都のせいでしょ?

私をゲームにのめり込ませたのは誰…?

KISSTILLとマネージャーさん達じゃない。



…悪者だから助けてくれないの?


…悪者だけど弱者なんだよ?


…ねぇ、私はどこで間違えたの?


光と付き合った時?

ゲームを始めた時?

景都と付き合った時?


…生まれて来た時?


私なんていらない?

私が死んで悲しむ人はいる?

私を救ってくれる人はいる?


私はそのまま崩れるように床に座り込んだ。


「小枝さん?」

「死なせて」

「は?」

私はうわ言のように呟いた。

シナセテ、シナセテ、シナセテ


もう、限界です。