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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.39 )
日時: 2015/05/13 21:22
名前: 逢逶 (ID: rS2QK8cL)

episode3
title 見舞い

私は治療をされている。
…らしい。
何が治療なのかさっぱりわからない。
永江先生によると私は軽い鬱状態にあるらしい、
しかし、いたって冷静で永江先生に全て話したあの日から気持ちは随分と楽になった。

相変わらず隔離されていて落ち着けはしないけど身動きの取れなかったあの時に比べれば何の問題でも無い。

そして今、点滴を打たれているところだ。

「これ何ですか?」

「うん?点滴だよ」

「知ってますよ」

「これはね、睡眠をとれるようにする薬と精神安定剤を入れてるんだ」

「へぇー」

精神安定剤って落ち着かなくなったら…じゃないの?
別に私普通なのに。

「今日はお見舞いに来てくれる人がいるからね。私も付き添いの元会いましょうね」

「誰ですか?」

「…KISSTILLさんですよ」

「会いたくないんですけど」

「まぁまぁ、KISSTILLさんは君に会いたがっているんだ。会ってもらえないだろうかね?」

「もしかして永江先生…、私の過去のこと話しましたか?」

「まさか。誰にも言ってませんよ」

永江先生は苦笑して言った。

「…もうそろそろかな」

腕時計を確認した永江先生。
そろそろ、その意味を理解しながらも首を傾げる私は焦れったい。
会いたくないけど会いたい。

曖昧なまま、病室の扉が開いた。

「久しぶり」

そう言って私に近付いてくる山田さんは見事にやつれていた。
頬は痩け、くまもできていて、何より足取りがおぼつかない。

他のメンバーはいたって普通で山田さんを支えながら歩いてきた。

「お久しぶりです」

「うん、久しぶり。元気だった?…ってごめん。失礼だった」

「…いえいえ」

「あの…」

「はい?」

永江先生が申し訳なさそうに顔を覗く。
長谷さんは山田さんを椅子に座らせ、永江先生の方に顔を向けた。

「…病名について言っておこうと思います。ただ、最初に山田さんの疲労の原因をお尋ねしてもよろしいですか?」

「ここではちょっと…」

伊藤さんは躊躇った。
それでもう理由はわかった。

「私のせいですよね?」

「…」

「そうですか。では、山田さんには席を外してもらって…」

「いえ!大丈夫です!俺、どうして蓮ちゃんがそんな状況になったのか気になってこうなったんです…だから、逆に聞かないと落ち着けないっていうか…」

「なるほど。では聞いていてください」

永江先生は深妙な面持ちで私の病気について話し始めた。

「PTSDとは、過去のトラウマが原因で障害が生じてしまうものです。小枝さんがすでに出ている症状ではフラッシュバック、睡眠障害、集中力低下、無力感です。睡眠障害、集中力低下、無力感は薬を投与し抑えていますが…具体的な治療はまだ始まっていません」

「…蓮のトラウマって何なの?」

「それは…」

「俺たちって何のために聞かされたの?先生は何のために聞かせたんですか?」

勘の鋭い森さんが話を遮り、ゆっくりと問い詰める。
その表情は硬い。

「小枝さんの意識がない時、あなた方はしっかり付き添っていた。仕事が忙しいはずなのに。ですから…この方たちならしっかり小枝さんを支えてくれるだろう、と思ったんです」

「…そうですか。でもね、俺たちは蓮の辛いことをわかってあげないと支えられないんですよ。どこまで踏み込んでいいのか、もしかしたら軽く言った言葉が知らない内に蓮を傷つけるかもしれない」

「…そうですが、小枝さん。どうですか?」

言おう。

言わないと立ち上がれないのだ。

言ってKISSTILLが離れて行ったとしてもそれはそれで仕方ない。

だってそれが私の運命だから。



私は口を開いた。