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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.49 )
日時: 2015/09/24 18:53
名前: 逢逶 (ID: KBFVK1Mo)

episode13
title 沁みる

今日は、面会に伊藤さんと森さんが来る。

昨日、山田さんと会って私の中で何かが変わった。




「お二人がいらっしゃいましたよ」

永江先生の後ろから二人の顔が覗く。


「久しぶり」

私は微笑みながら会釈する。
二人は戸惑いがちに、イスに座った。

「何か、感じ変わった?」

伊藤さんのふにゃっとした声が優しく響く。

「治療が順調だからですかね?」

「そっか、良かった」


「蒼になんか言われたしょ?」

「…」

森さんは伊藤さんとは正反対のきりっとした目を私に向ける。
怒ってるわけではないんだろうけど、怖い。

「言われたの?」

伊藤さんの声が耳に届き、頷く。

「なんて?」

「…好きだ、と言われました」

色々と簡略化してしまったけど、今の私には全部説明する余裕はない。

「あいつ…」

森さんは怒り気味に頭を抱える。

「でも、私を困らせるために言ったわけじゃないと思います。というか、私からそういう話になって…」

「…え」

「気持ちには応えられない、と。それで山田さんは、諦めない、と」

「そっか、話してくれてありがと」

「…いえ」


伊藤さんの手が私の頭を包み、やわらかに跳ねた。

「おい」

そんな伊藤さんを森さんが睨む。

どうしたんだろう、森さんの態度が明らかにおかしい。

「…もー、ヤキモチ?」

「は?違うわ」

「照れるなって」


二人のわちゃわちゃしたじゃれあいが始まる。

私は笑って見守る。


久しぶりに笑った。





「あ、そろそろ」

「うん、そうだね」

「じゃね」

「はい」

「また来るから」

「はい」




また来るから


そんな言葉がじーんと沁みた。