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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.54 )
日時: 2015/10/03 07:48
名前: 逢逶 (ID: w4lZuq26)

episode1
title 断つ

私の治療は振り出しに戻った。

食事は気持ち悪くて喉を通らない。
景都を思い出して夜も眠れない。
声が出ない。

そして、永江先生まで拒否する心になっていた。



永江先生は前のように優しく語りかけることも手を握ることもしなくなった。
震える私を見て永江先生は私との接触を絶った。
代わりに、看護師さんに手紙を渡していく。

手紙にはほとんど内容はなく、ただ〝大丈夫〟と書かれていた。


前は、永江先生の〝大丈夫〟はすごく安心できる言葉だった。
だけど今は、ただの言葉で。受け流せないけれど、心に残っているともやもやする言葉。


面会も当然中止。
治療では人の温かみに触れることが一番大事だった。
永江先生との接触すら絶っている状態で、私が信用できるのは〝女性〟という大枠で中身のない存在。



「今日の手紙です」

看護師さんから渡された手紙を開く。


〝大丈夫〟

いつもの内容。
いつもと違うのは、まだ続きがあること。

〝今後、新しい医師が君の治療をします〟


永江先生はどんな気持ちでこの手紙を書いたのだろう。
治す、と約束した患者に新しい医師を紹介する。
きっと辛いだろう。
無性に自分に腹が立って、布団に拳を叩きつけた。


静かな病室に鈍い音が響いた。