コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.59 )
日時: 2015/10/22 16:50
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode6
title パーティー


あれから、三ヶ月。



私は日の光を全身で浴びている。




退院したのだ。


順調に進んだ治療。
永江先生と吉橋先生とKISSTILLと。
私を大切に思ってくれる人のおかげで病気は治った。
再発の恐れはある、そう言われたけれど大丈夫だ。絶対。
私は前ほど弱くはないと思う。



景都が最後私に会いに来たのはきっと弱さを捨てるため。
お互い、弱かったんだ。



心地よい風に包まれて私は歩き出した。



最初に寄るのは、KISSTILLのところ。
退院祝いをしてくれるとのこと。
マネージャーさん達もいるって言っていた。

楽しみだ。



病院の前でタクシーをつかまえ住所を言うと、運転手さんは明らかに驚いた顔をした。
気のせいだと思い、流れる風景に目を向けた。


懐かしいと思える物など何一つない。
知らない場所が美しいと思えるほど単純でもない。


それでも心の奥底にある不思議な煌めきが、今の私を内から照らす。



「あのぉ」

四十代半ばくらいの運転手さんが丸い背中を更に丸め、申し訳なさそうに尋ねてきた。

「何ですか?」

「住所本当に合ってますか?」

え?
紙に書かれた住所を確認し再度読み上げる。

「そうですか…」

運転手さんはこほんと咳払いをして何事もなかったかのようにまた運転に集中し出した。
その態度が逆に気になって。

「何かおかしなことでも?」

「…いえ」

妙な間が、否定の言葉を肯定に持っていく。

「はっきり言ってください。気になるんですけど」

「…うーん。…その住所はタクシー運転手の間では有名なんです。大手企業のホテルが立ち並ぶ所の近辺で。そこに、一つだけ大きな屋敷が建っているんです。
誰も住んでいないようで、誰の持ち物かもはっきりしないのに、一向に取り壊されず。運転手は誰もその住所に送り届けたことがなくて。七不思議みたいな感じで、話が広まって行ったんですね。そうしたら今日、私奇跡を感じています」


あぁ。つまり…、この住所はその屋敷だってことね。

「私は招かれただけなんですけどね」

「それでも奇跡です。タクシー運転手歴二十年。一度もありませんでしたから」

「ふふ笑 あまり自慢しないでくださいよ?笑」

「もちろんです笑」



KISSTILLの屋敷。


運転手さんは目的地に近付くと緊張していて、とても面白かった。
大きな屋敷に到着してタクシーを降りようとすると握手を求められ、つい吹き出しながらも運転手さんの手を握った。





それにしても、大きな屋敷。




これからパーティーが始まる。