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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.60 )
日時: 2015/10/19 19:01
名前: 逢逶 (ID: MHTXF2/b)

episode7
title 淡い想い

ベルを鳴らすと、笑顔の山田さんが出てきた。

入って入って、と手招きする。
私が、お邪魔します、と小さい声で言うとにこっと笑ってスリッパを出してくれた。
やはりとても大きな屋敷。
何が凄いとは断定できないほどのつくり。

ゆっくり歩いていると、森さんがやってきた。

「早く歩いて」

すっ、と私の肩をだき歩く森さん。
そんな様子を膨れっ面の山田さんが見ていて。
思わず笑ってしまった。


連れて来られた部屋は多分リビング。
リビングにしても見たことのないサイズ。


大きなケーキと沢山のご馳走。
そして、みんなの顔。


ぽろっ、と涙が出て。
抑えが効かなくなって来た時、伊藤さんに抱きしめられた。

「よしよし」





しばらく泣いた。


泣き止んだ頃、長谷さんがグラスを持って来てくれてた。


糸村さんがすぅっと深呼吸して話し出す。

「小枝さんが辛かったこと、気付いていたのに知らないふりして逃げ出そうとした俺たちは弱いと思う。だけど、小枝さんはいつでも一人で頑張ろうとしていた。そんな人に今まで一度も会ったことがなくて惹かれていた。許してくれるかはわからないけど、小枝さんの退院を祝って乾杯くらいはさせてください。…かんぱーい!」


互いにグラスを触れ合わせ、楽しい日が始まった。



しばらく話しながら食事をして。

メンバーが減り、
私はソファーに座ってケーキを食べる。




隣に伊藤さんが座る。


「小枝さん…、じゃなくて蓮って呼んでもいい?」

「え、はい。どんな呼び方でも構いませんよ」

「…じゃあさ、俺のこと大和って呼んで?」

「はい?」

「お願い」

「全然大丈夫ですけど、良いんですか?」

「うん」

伊藤さ…、大和はふにゃっと笑って私をぎゅーっと抱きしめた。


「もしかして酔ってます?」

「まさか。まだ飲んでないもん」

うーん。
酔ってるって言ってよ。

離してくれない大和。
これは単なるスキンシップ。
愛情表現だ。
私は大和の背中に手を回した。


「俺ね、蓮のこと好きになっちゃった笑」

「はい?」

「好きなの、重症の方で。付き合おうよー」

「えっと、とりあえず離してください」

周りに誰もいないからってこれはまずい。
酔っ払った数人はかくれんぼするとかでどこかに行ったし、そうじゃない人もプールに行った。

だから実質二人。



やっと離してくれた大和。
その顔は切ない。

「…好きなんだ」

「…」

「他のやつには絶対渡さない。もう、蓮を傷つけない。だから…、俺にしなよ」



心が揺れる。
大和は大人だしきっと私を幸せにしてくれる。



恋は始まっていた。