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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.66 )
日時: 2015/10/22 16:58
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode11
title 瞬き

もし世界中のみんなが、私を騙していたとする。
気付いたとしても、私は騙され続けると思う。
自分から幸せを壊すような人間にはなりたくない。
だから私が幸せでいる限り、騙されたい。

今はそう思う。



近くのスーパーで、牛丼の材料を買った。
ネットの情報なのだけれど、大和は牛丼が大好物らしい。


作ってあげたい。



帰り道、柔い橙色の陽がビルに沿って私の元まで届く。
影が長くなる。



鍵を開け、家に入った。


ふと足元に目をやると、そこには誰のものかわからない靴があった。


大和のじゃない。
警戒しながら家に入ると、







光が座っていた。








「…ひ、かる」



「やっほ、蓮。久しぶり」


私はその場にへたりと座り込んでしまった。


「…どうして居るの」


「証拠がなかったんだよね、蓮を殴ったって。証人は蓮だけなのに話せる状態じゃないし、俺と会ってた証拠もない。KISSTILLは俺が犯人だって言ったけど俺はその時、ドラマの撮影中だってことになってたから。逮捕されなかったんだよね。KISSTILLとKISSTILLのマネージャーはあの手この手で俺を蓮から遠ざけたから今まで会えなかったんだ」


「私は…、会いたくなかった」


「どうして?」


「大嫌い!私は付き合ってる人がいるし、その人をちゃんと愛してる!もう、顔も見たくなかったのに!」




光は黙ったまま瞳の輝きを狂気に変えた。
ゆっくりと近付いてくる。
私は後ろに下がる。


「やめて…」


「俺は蓮が好きなんだ」


「私は嫌い…」




そう言った瞬間、光は私に凄い勢いで迫って来た。


私は押し倒され抵抗するけど全然意味がなかった。




がちゃ、


ドアが開く。


見ると唖然としている大和がいた。



すぐにその顔は怒りに変わって、



靴を履いたままずかずかと家に入る、大和。



光を起き上がらせ思い切り殴った。




光は私の腕を掴んだまま、大和を睨みつける。


「離せよ!」


大和は私の腕から光の手を離しながら怒鳴った。



「…俺は、蓮と付き合ってる」


大和がゆっくり伝えると光の目から涙が溢れた。



「…俺だって蓮と何度もキスをして何度も抱き合った…。俺の暴力が蓮の気持ちを離れさせてしまったなら謝る。ごめん。…だから、俺とまた付き合ってよ」


「私は…、大和が好きなの。初めて人を愛せたの…。だから私の幸せを願って欲しい…」


「俺と蓮は別れない。だから…諦めて欲しい」


大和が頭を下げる。


「はぁ…、もー。大好きだったんだよ。世界で一番…」

光は目を背け、悲しそうに笑った。


「幸せになれよ、俺が言えたもんじゃないけど」



光はそう呟いて家を出た。





光との関係が終わった。

間違いなく光は私にたくさんのものを与えてくれた人。
繋がりが消えても心には楽しかった思い出が瞬く。






失わぬように、私は今の幸せを噛みしめる。