コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.70 )
- 日時: 2015/10/24 09:42
- 名前: 逢逶 (ID: KG6j5ysh)
episode13
title 別れと共に
「困るんだよね」
社長はそう言ってため息をこぼした。
「すいません。俺の不注意です」
大和が謝るけど緊張感は強くなるばかり。
私はどうしたらいいかわからないままで。
「小枝さん、KISSTILLは知っての通りうちで一番人気、というかね日本でトップなんだ。今スキャンダルがあったら困るんだ。大和の友達ってことにしておく。だから…、別れてほしい」
〝別れてほしい〟
認めてくれるわけがない。
当たり前のこと。
「俺は、別れません。蓮以上に人を好きになったことがありません。ずっと一生一緒にいます」
「じゃあ大勢のファンと彼女と今までどっちを優先のして来た?!」
山田さんが怒鳴った。
「今まではファンのみんなだった!社長に言われたら別れてたよ!でも今は…蓮をとるから!」
KISSTILLが私のせいで分裂する。
そう予感して、やっと口を開いた。
「別れます。私、大和と別れます。そもそも本気じゃなかったし」
言うしかなかった。
大和はきっと悲しい顔をしている。
顔を見たら決心が鈍るから。
だから私は、悪者でいる。
私は本社を飛び出し車に乗って家に帰った。
涙が頬を伝う。
必死で拭った。
家の前には報道陣が押しかけていて入れそうもなかった。
だから、アパートの裏の塀を越えて見つからないように窓から家に入った。
「…ふう、疲れた」
そのまま全て忘れるように眠りについた。
起きたのは夕方の五時。
アパートの前は静かになっていた。
私が帰ってこないと思ったのだろう。
このままひっそりと暮らして行こう。
大和にも会わず、誰とも会わず…。
そしたらいつか忘れられるだろう。
全部忘れて…
…そんなことできない。
大和を傷つけた罪悪感を背負って生きていく。
一人で。
ぴーんぽーん
ベルが鳴った。
記者だろうか。
私は相手を郵便受けから確認した。
変装した山田さんがいた。
私はドアを開けて家へ招き入れた。
何を話に来たかはわかってる。
大切なメンバーを傷つけたことに怒っているんだろう。
「…蓮ちゃん、まだ大和のこと好きでしょ」
「そんなこと…」
山田さんの切ない表情が胸に突き刺さって、痛い。
「無理すんなよ」
強引に腕におさめられた。
「俺の前では素直になってよ」
優しい山田さんは、弱った私の心の隙間を埋めてくれる。
私は泣いた。
おそらくもう会うことのない大和を想って。
「蓮ちゃん、俺さ…、まだ蓮ちゃんのこと好きなんだ」
「…」
「諦めらめられない。でも蓮ちゃんを傷つけないためにちゃんと諦めるから。俺をふってくれない?…大和のことがあって酷なのはわかってる。だけど…お願い」
山田さんは私をちゃんと想ってくれた人。
大切な人。
今ちゃんとふらないと、これから山田さんが傷つく。
だから…
「…私は大和が好きだから。ごめんなさい」
「うん、ありがとう。すっきりした」
山田さんは体を離し、にこりと笑った。
「私を好きになってくれて、ありがとう」
私が泣くのはずるいと思う。
勝手に出てくる涙だって同じだ。
わかってるはずなのに。
「もー、泣かないで…?ちゃんと幸せになるんだよ?」
山田さんは私の頭を優しく撫でた。
こんな私を好きになってくれた人、ありがとう。
どうか私より良い人を見つけて幸せになってください。
ありがとう、山田さん。