コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.8 )
- 日時: 2015/09/30 18:29
- 名前: 逢逶 (ID: mJV9X4jr)
episode7
title 面倒くさい誘い
会議は無事に終了し、帰宅しようと荷物をまとめていた。
「…小枝さん?」
「はい?」
振り向くと、中島さんがいた。
「…小枝さん。この後暇かな?」
「えぇ、暇ですけど」
「…食事でもどう?他のメンバーもいるけど」
「あ、是非!」
「じゃあ、ここに来て。俺達は先行ってるから」
住所の書かれた紙を渡され、頷いた。
あー、家でホラー映画見たかったのに。
誘いは断れないし、断る理由もない。
コートを着て、事務所を出た。
寒い…
あれ、車は…?
そうだ。TV局だ。
仕方なく糸村さんに電話を掛ける。
《もしもし…どうした?》
「えっと、車ってどうなってますかね?」
《どうって、え?…あぁ笑 あの時は、急いでたからねぇ。車はTV局に置き去りかな》
「えぇ!」
《ははっ笑 嘘だよ。事務所の人にお願いして、今は小枝さんの家にあると思うよ》
「え?あ、はい笑 すいません。お疲れ様です」
《いえいえ。お疲れ様です》
電話を切り、考え込む。
「どうしよ…」
紙にかいてある店の位置を確認する。
…近いじゃん。
歩いて、10分くらいかな。
冷たい風の中、歩き出した。
楽しそうだな…
いちゃつくカップルを見て思った。
あんなに笑顔で…
私には無理だ。
男といて楽しかった記憶なんて無い。
きっとこれからの食事も楽しくない。
「…面倒くさいな」
面倒くさい、と言葉にすれば余計に面倒くさくなってきた。
重たい足を引きずりながら、店まで来た。
大きい店だけど、あまり人はいない。
芸能人御用達かな…?
店内に入り、店員さんが駆け寄って来た。
「小枝蓮様でしょうか?」
「え、はい」
「こちらへどうぞ」
通されたのは、個室。
個室だらけの店だけど、更に奥の大きな部屋。
和風の店。
襖を開けると、いるだけで絵になる五人が座っていた。
「…蓮ちゃん!こっち!」
あれ、山田さん…上機嫌?
あのふてぶてしい感じはどこへ行ったのか。
手招きされ、山田さんの隣に座る。
「…今日はね、蓮ちゃんへのお礼としてご馳走するから」
お礼…?
何もしてないけど。
「…すいません。何のことかさっぱり…?」
「え!ツアーのこと!」
「ツアー?…あぁ!お礼だなんて、そんな」
「させてよ!本当に嬉しかったんだから」
…お礼とかいらない。
感謝されるなんて慣れないよ。
沈黙があり…その間に料理が運ばれて来て話は料理のことになった。
良かった。
あのままだったら逃げ出してたかも。
美味しい料理を食べ、たまにある質問に答える。
「蓮ちゃんは、マネージャーになった理由無いんだって」
「へぇ。続けられる?いなくなったら困るけど」
「続けますよ。楽しいんで。この仕事」
「良かった」
山田さんが横で誰にも見えないように私の手を握った。
え…
私が目を見開いた瞬間、襖が勢い良く開いた。
ぱっと離される手。
視線は、山田さんから開いた襖に移る。
「…え」
見たくない顔がそこにはあった。
「…蓮」
「え、知り合い?」
そりゃ、驚くよね。
人気若手俳優の結城光と、知り合いなんて。