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Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.14 )
日時: 2015/05/23 22:11
名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: Ft4.l7ID)

【 夜陰の恋はbitter 】


 どうせなら、このまま貴方と共に呑み込まれても良いと思った。私と貴方以外、誰もいない世界でなら、きっとこの思いも届くと思ったの。それは貴方も同じ、でしょう?





「お、お母さん! どうしたの? 返事してよ!! お母さん!!」


 何度呼びかけても、床で深い眠りについたお母さんは目を開く所か、1ミリも動かなかった。やだ、やだやだやだ。そんな言葉が頭に響いて、何かが込み上げて来ては零れ落ちる。お母さんの身体に触れると、徐々に冷たくなって行くのを感じた。怖い、やだ、消えないで、逝かないで……っ。手を握り祈っても、あの安心する温かさはもう戻って来なくて、優しく握り返してくれる人はいなくなった。頭痛がする。眩暈がする。息が出来ない。苦いよ。痛い、冷たくて凍りそう。理由は解らない。……解らないから、逃げても良い? 独りは辛くて、震えそう。ねぇ、お願い。良いでしょう?





 星が見えて来た。
 流石にコート無しで、午後11時の公園は冷たい。……そろそろ帰ろうか。でも、何処に? 何処に帰れば良いの? 私は独りで、何で此処に立ってるの? 何で、何で私は——


「そんな格好で、寒くない?」

 突如現れたのは、私と同い年くらいの男の子。長袖1枚の私に、どうやら驚いている様だった。寒い? 寒いって何? そう思っていると、男の子は私に近付いて、自分が身に着けていたマフラーを私に巻き付けた。

「……あの」
「いやぁ、ごめん。寒くないかも知れないけど、見ているこっちが寒くなりそうで……」

 照れているのか頭を掻きながら笑う。確かに身体は冷たかったけど……。

「貴方は……良いの?」
「俺? 俺はほら、コート着ているし。耳当てもあるから、大丈夫だよ」

「君は?」と白い息を吐いて尋ねて来た。ゆっくり下を向き、考える。今、私は暖かい? 動く度に首元が温かくなっている気がして、何だか安心する。少し間を空けてから答えた。「暖かい」と。顔を上げたら、男の子が「良かった」と言ってコートのポケットに手を入れ、笑っている所だった。元々幼い顔立ちなので、余計幼く見えてしまう。


「……どうしてこんな所にいるの? お家の人、心配しない?」

 いきなりの質問に、思わず「えっ」と訊き返す。『お家の人、心配しない?』それ、貴方は違うの? 良く解らず、首を傾げていたら、男の子は何故か謝って言った。

「俺ね、追い出されちゃったんだ……。出来損ないだから」

 
 その笑顔は私の心の中で、何処か寂しそうに映った。少なくとも、先程の照れた顔よりは、ぎこちない。寂しいって事は……悲しい? 貴方は今、悲しいと思っている? 私は、貴方の少し冷たい手を握った。思い出しそうになった情景に目を逸らし、笑い顔を貼り付ける。きっと、私もぎこちなく見えているんだろうな。

「私も……追い出されちゃったの。自分の記憶から。似ているね、私と貴方」


——だから、2人で温まろうよ。今度こそ。





 私は午後7時を過ぎたら、絶対に1人で公園には行きません(ドヤ)。
 そもそも、あまり公園には行かないんですよね。普段から。徒歩で行ける距離に広い公園が無い……。本当に遊具も何もない公園(公園なのか?)はありますけど。
 皆様は、真冬に長袖1枚だけで外を歩かない方が良いですよ。かなり寒いと思われます。