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- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.19 )
- 日時: 2015/06/26 18:49
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 トキメキは風に吹かれ 】
繋いだ両手はあの頃よりも大きいはずなのに、何故だろう。小さいよ。
「あ、の」
「何?」
「さっき……」
訊きたいのに、言いたいのに、喉につまって出て来ない。
騒がしい廊下を抜けて、人のいない埃っぽい資料室に入る。鍵が開いていたのをみると、前に使った先生が誰なのか直ぐ判った。紡(つむぐ)はそれを知っていたのだろうか。らしくないな……私も紡も。生まれてこの方、彼の言葉を信じられなかった事なんて1度もない、そう思っていた。だって紡は無意味に嘘を吐かない人だから。——そんな人だもの、きっと。
「ごめん。言えなくて」
あれも嘘じゃない。
黒板に書かれた白い文字が浮かぶ。違う、言えないのは私だ。
苦しそうに笑顔を作ってくれる紡の優しさに、今更だけど好きだと感じる。山積みにされた紙と段ボール。もう少し雰囲気のある場所が良かったかな。……いや、これで良い。2人で過ごした長い時間を集めた様で。此方の方が笑えるし。
「謝らないで、紡から聞けなかったのは残念だけど」
「………………俺」
「私さ、前から紡がすきだったよ」
下を見ていた顔を上げ、私を捉える。驚きと苦しみが混じっていて変な顔。意外とすんなり言えた。言えたよね。折角出せたんだ、紡に謝られるくらいなら全て吐きたい。悲しみで崩れちゃう時まで。目が潤む。まだ、まだ待って。
「小さい頃、私を頼って手を繋いだ紡も。ふざけ合うのが好きで叱られる紡も。……今、此処にいる紡も。あ、大丈夫。紡にそんな感情がないなんて知ってる。私の一方的な片思い。ははっ、こんな日々にも今日でお別れかー。寂しいな、片思いだけ、ど」
「——っ」
腕の中は安心する。
そこに紡がいるのだと実感出来るから。
「一方的なんて……決め付けないでよ。ばか」
「や、だ、つむっ、ぐ」
「俺も好き。好きだよ……」
けど。
「……何処にいても、元気でね」
「ああ」
「……泣かないでよ」
「ああ」
「……すき、紡がすき」
忘れないよ、貴方と過ごした思い出。絶対。
どうか貴方も——忘れないで。
*
修正。
登場人物は変えていませんが(大まかな設定も)、場面が違いますね。元は教室だったのに。それに紡が優しくなっている気がするのは……あは。遠距離恋愛は難しい((