コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.24 )
日時: 2015/04/04 10:43
名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)



【 消えた君の断末魔 】
※暗い、重い、色々注意報


「ずっと、ずっと信じてたのに……。ほんと最低!!」


 人気の無い夜道で声を荒げた女が、自分より背の高い男の胸倉を掴んで、問い詰めていた。黒く染まった女の髪は、まるで怒りを表しているかの様に乱れており、険しい表情をしているその顔は、整ったパーツが全て崩れてしまった。
 男の方は、電柱の影に隠れて女から見え辛くなっていたが、何処か悲しい光を宿した瞳で、女の目を見つめていた。細身とはいえ、女よりも段違いに筋肉がついているので、振り払おうとすれば簡単に出来るはずだが、男は何故かそうしなかった。理由は——もしかすると、無かったのかも知れない。


「こんな……っ、こんな事になるなら! 貴方何かと付き合わなければ良かったのに!!」

 女に何を言われようと、男は身動き1つせず、ただ黙って女の言葉を聞いていた。そこには、否定も謝りも無かった。それが余計に女を苛立てたのか、勢いに任せて男を殴った。顔は勿論。腹、背中など男の身体全てを徹底的に殴った。女自身も良く解らずに、只管哭いては殴り、哭いては殴りを繰り返す。女は思った。こんな事ならば、いっその事——


「死んでしまえば良いのに」


 身体が揺れた。心の奥底まで揺れ動いて欲しいと女は願ったが、揺れる所かずれる気配すらしなかった。片手に全てを託し、最後の一撃を食らわせた——つもりだった。
 女は少しの間、宙に浮き、まるで転落したのかと見間違える派手な音を立てて、地面に倒れ込んだ。男は一瞬目を見張ったが、直後自分の耳を突き破った急ブレーキの音と人間の怒声や悲鳴で、状況を全て理解した。
 男が全力で手を伸ばし、駆け出し始めたその時。女は傷付いて荒くなった呼吸の中で、小さく笑い確かに告げた。


「愛していたよ」と。





 こういった話も、偶には良いかなとか思いました。
 かなり暗くて書いている時も、ちょっと気分が……。次は明るい話が書きたい! でも、この話に出て来る「男」は悪い奴では無いと思います。誤解か何かだったんじゃないかなぁ。そう考えると……悲しい話ですね、って自分で書いておいて、何を言っているんだ私。