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- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.27 )
- 日時: 2015/07/31 23:07
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 妄想奮闘記 】
「理央(りお)くんが好き! 大好き!!」
「解ったから黙って」
それは、生まれて初めての告白だった。
が、間髪を容れず答えられ、敗れてしまった小学2年生の私は、とある事を思い付いた。何時かまた、理央くんにこの気持ちを伝えた時、直ぐ振られない様にする為に。
*
「今日は3分20秒教室から出て来るの遅れていたけど、何処か調子悪い? これから16時17分の電車に乗るんだよね。一緒に帰ろうか?」
あの日から私は、理央くんの行動パターンを徹底的に調べ上げ、今では分単位まで把握している。元々家が隣同士な私と理央くんは、両親の仲が良く、会う事も結構多かったから、把握するのは大して難しくなかった。それでも最近、少し不思議に思う事がある。
「だったら何? 一緒に帰る訳ないだろ」
理央くんが何故か冷たい。
いや、前から冷たかったけども。冷たい水に氷が入った感じになっている様な……。気の所為だと思いたい。幼稚園児の時までは、凄く優しくて、大らかというか、私に対しても柔和な笑顔だったのに、小学生に上がってから、私を避けて行った。理由は良く解らない。訊いたけど、答えてもらえなかった。言ってくれないのは、私が頼りないからなのかなぁ。
また理央くんの事を考えて、自分の世界に入り込んでいたのか、空は真っ暗で夕陽が沈みかけていた。
「ええぇ!? う、嘘っ! 今頃理央くん、電車で音楽聴きながら居眠りしているのに!! 寝顔が可愛いから、撮って部屋に飾ろうと作戦を寝ずに……」
言いたい事は沢山あったが、校門を走り抜けようとした所で止めた。止めるしかなかった。だって——
「りっ、理央くん!?」
草木で囲まれた門に寄りかかっていたのは、電車を降り、自宅へ向かう途中にあるコンビニでビスケットを買い占めているだろう理央くんだった。な、何で此処に!? 忘れ物をしたとか? いや、まさか理央くんに限ってそんな事は……。
私に気付いたのか、携帯に目をやっていた理央くんは、此方を睨み付けた。うぅ、静かに通り過ぎた方が良かったのかな。今更どうにも出来ないけど……失敗。
「人の寝顔勝手に撮るとか……ほんと変態。交番に突き出すよ。気持ち悪」
少し前のめりになりながら、ポケットに手を入れる理央くんの後ろには、黒色のオーラが漂っていた。恐ろし過ぎて、小さく悲鳴を上げ、1歩下がる。理央くんは不機嫌になると、時々こういったオーラを出す。見慣れている私でさえ、退いてしまう程恐ろしい。
「意味解んない。馬鹿じゃないの」
下がった事に苛立ったのか、更に不機嫌が加速して行く。このままだと絶対……。急いで機嫌を直そうと、駅に向かって歩き始めた理央くんを追いかける。もう少しで届きそうになった瞬間、理央くんは言った。「付いて来ないでよ、変態!」と。
今日2度目の『変態』に大ダメージを受けるものの、此処で泣いてはいけない! と自分に言い聞かせ、理央くんの左手を握った。流石にダメだっただろうか。また「変態!」と言われる予感がし、目を瞑る。ごめん、数秒前の私。泣いてはいけないのに、泣きそうだ。
「ごめんねっ、私、てっ、手なんて繋いで……。お、可笑しいよね! 離すね!! あはは!!」
涙が込み上げて来て、少しでも下を向いたら流れ落ちてしまいそうだった。でも、でも、それでも私は——
「………………好き」
理央くんには聞こえていないと思う。だけどこれは、ずっと変わらずに膨らんで行く気持ち。もっと近付けば、もっと大きな声を出せば、君に届くのかな?
沈んでいた夕陽が私達を明るく照らして、優しく包み込んでいた。
*
今度こそ明るい話を! とか思って書いた話です。
書き終えた感想は「2人共バカだなー、早く素直になれば良いのにー。特に理央が!!」です。最初は先輩と後輩のラブコメだったのですが、何があったのか、こんな展開に。女の子は『変態』+『可愛い』をイメージしています。此処まで相手の事を知っているキャラは初めて(笑)