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【　空を越え、時を越えて。　】


　ぼやけた映像に映し出される君の名は、一体何と言ったかな。
　瞼を閉じれば思い出せた君の笑顔すら、風に乗って見えなくなった。浮かんで来るのは、甘ったるい花の匂いと僕を呼ぶ誰かの声だけだ。


　瞼を開けても、これ以上は手に掴めない。
　それなら今くらい、この欠けた世界から逃げ出しても良いじゃないか。終わりのないあの世界なら、きっと君は、僕に笑いかけてくれるだろう。



　頬に零れた冷たく塩辛い何かが、また僕を嗤っている気がした。


＊
　
　
　今回も凄く短いです。
　元々、この作品のタイトル「　空を越え、時を越えて。　」は長編小説で使おうと思っていたのですが、良い案が浮かばず諦めました。
　なので、短編に回したのですが、思ったより短かったです。書いてみると(笑)
　解釈は作者の中でも何通りかありますので、皆様の想像力で色々物語を考えてもらえると、とても嬉しいです!