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- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.46 )
- 日時: 2015/06/16 18:13
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 傷痕 】
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君の笑い顔ってさ、太陽みたいに眩しくて、凄く綺麗だよね。あの顔をこれからも見ていたいんだ。誰よりも近くで。我が儘だって、これでも理解しているつもり。届いて、僕の気持ち。
*
「見っけた、やっと、いた」
汗まみれの身体が疲れ果てた頃、僕は彼女の前にいた。園内の隅で蹲り、小さくなった姿を見て、どう声をかければ良いのか悩んでしまう。僕から喋って大丈夫何だろうか。気付いてもらえるまで、此処に立っている方が? 言葉が流れて来るけど、正解が何なのか判らない。結局、話しかけた。状況に合わせて言葉を選ぶ。僕は器用じゃないから、また怒らせてしまうかも知れない。
「ルイ、ごめん。僕が乗り物に乗ってあげられなかったのに、急に怒ったりして。そんな事をされたら、嫌になるよ」
黙ったままで答えない。反論で良いから何か言ってほしかったが、僕が傷付けてしまったのだから、言える立場ではない。微動だにしない彼女に1歩近付いて、伝えたい言葉を纏め、ゆっくり言う。
「傷付けたのに、1人にしちゃった。本当にごめん。直ぐに追いかけて、謝れば良かったんだ。なのに、僕の最低なプライドが邪魔してさ。ね、ルイ。乗ろう。僕も乗りたい」
「違う」
綺麗に整えられた前髪の隙間から覗く赤で染まった瞳が、冷たく僕を見ていた。怒られる。直感的にそう感じて、逃げ腰になる僕は、どれだけ酷い奴何だ。ルイは立ち上がり、俯いたまま——
「え」
抱きついた。
驚きのあまり硬直していると、身体が熱くなって行き、まばゆい日差しの暑さすらどうでもよくなる。耳元で吐いた息が当たって、痒い。心臓が破裂してしまえば、静かになるのだろうか。いや、ならない。
「優が……悪いんじゃないよ。あたしが、意地を張っただけ。悔しかった。どんなに頑張っても、優には『女の子』として意識してもらえなくて。幼馴染ってレッテル剥がしたくて、遊園地に誘ったけどダメだったのが、凄く。それでもね、優はあたしにとって『男の子』なの。これからも。我が儘を言って困らせた、ごめんね」
ルイの両手がどんどん弱く、小さく。
「ゆ、う」
「違わない! 僕だってルイの事、小さい頃から『女の子』として見ていた。何をしてもダメだった僕を、支えてくれていたのはルイだよ。ルイなんだ。幼馴染だけど『女の子』でもあった。方法が解らなくて、探したけど諦めて。何時も、こんな僕に」
予想外れの青天に濡れた服、動き過ぎて泣いた身体、熱を冷ましたくない。夢の中で浸っていたいから、太陽の傍で温まっていたいから。少しの間、息を止めて。
「沢山の愛を分けてくれていたよね」
報われる何て、全然、考えていないよ。
だって、そうでも思っていないと、この世界に立っていられない、僕。
*
書き……終わり、まし、たっ。
始めた時の設定は「好きな人がいる少女に思いを寄せる少年へ恋する少女」だったのですが(面倒臭い設定)。ルイの気合でなくなりました。明るい少女って、一緒にいるのが楽しくなりますよね! 私はそうです! 皆さんはどうですか?