コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.5 )
- 日時: 2015/03/30 17:42
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 昨日も今日も明日も僕は。 】
雨だ。
窓の外から水音が聞こえたので、僕は思わず勉強机に向かっている身体を停止し、持っていたシャープペンシルを投げ出しそうになった衝動を抑え、ゆっくりとノートの上に置いた。
それは久しぶりの風雨だった。
此処5、6日は降っていなかったと思う。最近は周りに「勉強しろ」と耳が痛くなるまで言われていたので、正直記憶は曖昧だが、確かそれくらいだったはずだ。
「それにしても、綺麗だなぁ」
僕は雨が嫌いじゃない。寧ろ好きだ。何故かと問われても、自分も良く解らない。でも、小さい頃から雨を見ると傘無しに外へ飛び出していた、と母さんから聞いた事がある。全く、その時の僕はどれだけバカだったのだろうか。今の僕なら——やってしまうかも知れない。いや、決してバカではないのだろう。保証はしないが断言はする。
勉強を放ったらかしにして、雨音を聞く為に窓際へ近付いた。やっぱり僕は、音楽が耳に響く度、何処か安心している様な気がした。身体に染みて温かくなる。……普通の人から見れば、こんな僕は「可笑しい奴」なのだろうが、僕から見ればこんな良い音に惹かれない方が変だ。
「もう梅雨明けかー」
自分で呟いたくせに、胸に突き刺さって抜けなくなる。梅雨明けという事は、後少しで夏休みに入る訳だ。と、なれば当然。学にあまり優れていない僕は「夏期講習」等という悪魔に襲われてしまう事になる。妙に黙っていた、誰かサンの怒号が頭を過る。これはいけない、せめて勉強をした形跡を残しておかなければ。僕は少し涙目になりながら、参考書を開いた。そもそも、勉強に関心がこれっぽっちも無い僕が、慌ててシャープペンシルを握った所で何が変わるというのだ。何も変わらないじゃないか。
「もう厭きたんですけどー。つか、何コレ眠いぃ」
まだ10秒も経っていないのに、僕の手にはシャープペンシルはなかった。床に落ちていた。拾おうと手を伸ばしたが、途中で何者かに止められる。仕舞いには、雨に意識を向けようとしているのか、勝手に回転椅子が動き出してしまう。だが、これは僕の所為ではない。断じて違う。勝手に動いたのだ、僕が悪いはずがない。
それにしても、何時から何だろうか。僕がこんなにも雨に魅了されてしまったのは。母さんから聞いた話では、小さい頃雨が止むと大空一杯に映される目が眩む様な美しい虹を見る事が出来る橋に、心を奪われてしまったらしいが……。いや、流石にそれだけで好きって事は——有り得るか。うん、僕だしな。
あ、そういえば他にも言っていたな。何だっけ。ほら、アレだよ。えー、アレ。あー「女の子」! 外を通った親子で思い出した。その時僕には、自分と同い年の友達がいたらしい。残念ながら全く覚えていないけれど。今はもう引っ越して、近くに住んでいないとも言っていた。
「僕に女の子の友達、ねぇ。今じゃ想像すら出来ないわ」
僕は気軽に女子と仲良くなれるタイプじゃない。だから、きっと母さんが親しかったのだろう。親同士、気が合う所があったのかも知れない。まぁ、お人好しの母さんだ。仲良くなるのも簡単だろう。そんな人の息子がコレとか、マジでないわ。神様、性格間違えたんじゃないの? そう思えば思う程、自分にダメージが来るのは気の所為だろうか。僕って結構、心が弱いのかも。
「…………行ってみようかな」
それは何と無く、本当に何と無く呟いてみた言葉。でも、言った途端、僕の中の何かが行く気にしてしまった様で、気が付くと携帯を入れたバッグを片手に通して玄関へと向かっていた。
多分、帰って来たら鬼と化した母さんに、勢いよく音を立てて、か弱い僕の心は再生不可能になるまで砕かれてしまうのだろうけど、今だけでもなるべく気にしない様にしていたいと思う。
僕はそっと、濡れた地面に足を下ろした。
——まだ、そこに君がいるとは知らず。
*
今回は、前回より長めに書いたつもりです。
雨って良いですよね! 自然の恵みって感じがします!! 何処かへ行く日に降られたら嫌ですけどね……。
私事ですが、最近気付いた事があります。自分の小説(未公開も含む)を読み返していたら、現在へ近付くにつれて、徐々に男子の一人称が「俺」から「僕」に移っていました。自分的に男子は「僕」の方が書き易いからですかね。良し。「俺」を増やしていこう!