コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.71 )
- 日時: 2015/10/04 12:52
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 花弁に口付け 】
僕じゃ満足出来ないわけ?
そういった意味で言ったのではない。でも君の怒りをぶつけられたら、言葉がつまってしまう。重い沈黙、それを破るように何かが閉まる音がする。君が出て行ったのだ。「待って」と走って追いかけるが、もういなかった。何で、何であんな事を。私はただ……。
*
気まずい、その言葉に尽きる。昨日は家だったからまだ良かったものの、此処は学校。逃げる所などないし、同じクラスなので顔を合わせずに過ごすのは、まず不可能。しかも部活動も一緒だという。君は黙々と作業を進めている。私と君が所属するこの美術部は、3年生が引退してしまってから、人数がかなり減ってしまった。半分近くが3年生だった所為もある。よりによって何故、今日他の部員が誰も来ていない。1人でもいてくれれば何か切り出せそうなのに。風邪で休んだ友達を思い浮かべては、溜息が零れる。私が謝らないと。
「きの——」
「嫌なら」君は一呼吸した。「帰っていい」
顔も見ずにそう言われ、胸が痛んで倒れてしまいそう。気まずいけど帰りたいとは絶対に思わない。君から逸らしたら元に戻れない気がしている。私は叫び声と変わらない、高い声を出した。呆れられちゃうよ。
「何でそんな」
「溜息吐いて顔色悪い。無理してまでいてもらいたくない。見たくない。疲れているんだったら、休んどいて」
冷たいはず、だけど温かく感じる声。耳に馴染んでは溶けていく。お世辞にも優しい人とは言い難い。でも良い人だと思う。こんな人だから私は素直になれる。
「無理……してないよ。廿楽(つづら)くんに謝りたくて。少し怖かった。また怒られちゃうって」
「は? 『また』? 僕怒ってないし」
「でも昨日……」
君は「ああそれ」と目を閉じた。男の子だけど睫毛が長くて、女の子でも通用しそうなくらいだ。女の子として生まれてきた私としては、何とも羨ましい限り。
「考えていたんだよ」
「考えて?」
「馬鹿。自分で言ったのに憶えてないの? 恋人だったら普通」
鼻先が軽く当たった。ピントが合わないので2重線に描かれた絵のよう。高鳴った心臓。君に「聴こえる」と指摘され、更に激しく鳴り出す。計らなくても判る、高熱だ。熱さで混乱すら出来ない私に、君は尖った声を刺した。
「伸びたの、背」
「!?」
背伸びした姿が可愛らしい、なんて束の間。体勢が変わって柔らかいであろう唇に急接近する。鼓動が飛び跳ねた。独特の爽やかな匂いに、君は「男の子」なのだと再認識させられる。勢いでぶつかった胸板が、何というか、逞しく思えて気恥ずかしい。
「そんなに望むなら、本気で怒ってあげようか?」
低音ボイスで囁かれると両手を首に回される。君の顔が高い位置にあるのは、椅子に膝立ちしているからだろうけど、慣れておらず胸は優しく痛む。逃げ道がないという訳でもない、動かないだけ。身体の自由がきくなら絶対、絶対。……動く。
「お、お願い、します」
「ん」
重ね合わした箇所の熱が混じり合う。息が乱れてリップ音も聞こえない。力が抜ける。大人に近付いたような、変な感情。長い間重なっていた。やっぱり君は優しくなく、荒々しい重ね方もしてきた。けれども、嫌とは思えない私、すっかり虜にされて。悔しいなんて感じないよ。感じてしまったら、勝ち誇った顔をしている君に負けてしまうもの。少しくらい、偶には意地を張って良いかな。あんな事を口走って、今では妙に嬉しい。
(恋人なら普通)
(——キスとかしちゃうのかな)
*
とりあえず廿楽さんが可愛い狼と確認した女の子。
初々しいカップル大好きです。低身長の男の子も大好きです。ピュアな女の子もだいす((