コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第一話 いち ( No.4 )
日時: 2015/04/01 22:43
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)

*神聖なるカルテの中の腐った住人*



 第一話  ーこもれびクリニックー


 まず、医師免許を取るために、四千万近くの金をかけて大学の医学部に六年。年に一度の医師国家試験を受けて、受かれば終了……ではない。
 そのあとには二年間の臨床研修があり、そこで研修医として勉強。最終的に医師として働くのに、最短でも大学入学から八年という月日が必要となる。
 そんな途方も無い時間をかけた奴らが、ここにもいた。
「次の方。鈴木さーん」
 経費削減の為にリサイクルショップでサンキユッパで買った黒のビニールっぽい椅子に堂々と腰掛け、医者の必須道具マスクをしっかり着用すれば準備完了。
 狭いロビーに四つ置いてある、少し汚れた緑のソファーには、三人の客がいた。一人は七十そこらの老人の男性、あとは三十代後半くらいの女性と、その子供と思われる小学生……十歳程度の男の子。子供の方が咳をしているから、きっと風邪だろう。
 試合開始。時計の長針が診察開始時刻の十時を指すと、彼は少し低めの声で名前をコールをした。

 東京の少し外れたところにぽつんとあるここ〝こもれびクリニック〟は、とても小さな町の病院だ。建物の外見はクリーム色の壁にツタ植物が生い茂っていて、ドアは古そうな渋めの色の木。お世辞にも立派とは言えないところだった。
 中に入っても、まるでマンションの一室の様な狭さのロビーに、緑色のソファー四つと、ここから歩いて十五分のところにある園芸店で買った小さめなガジュマルの木が一本だけ。診察客が最初に行くカウンターには、苔丸と呼ばれる苔を土台にそって丸めたものが置いてあった。
「ただの風邪ですね。熱冷ましのお薬出しておきますから」
 診察室はというと、かなり綺麗に整頓されていて、色々な器具やベッドはきちんと整えられていた。
「ありがとうございました。先生」
 親子は例を言い、親は深く子供はペコッとお辞儀をした。診察室のドアを開けてまたペコッとお辞儀。処方箋用紙を貰うために、またソファーに腰掛けた。
(今日は初めから二人も診察があるのか。いい感じだな)
 お尻のところだけクッションになった椅子に腰掛ける彼は、口を少し釣り上げ、ニヤッと笑みを浮かべた。