コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第一話 ご ( No.10 )
日時: 2015/04/13 20:57
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
参照: 愛キャはお待ちを!忙しくて全然書けていません^_^;


「──すごい家だな」
「そうですね」
 二人とも、今自分がいる状況をイマイチ理解しきれていなかった。あの宮口からは想像もつかない家だった。もう、笑うしかない。
 二人がやっと手元に置いてあるお茶とお菓子に気付いた頃、また障子が開き、次は女性と一緒に、Tシャツ姿の宮口老人の姿があった。
「いやあ、どうもどうも。本当に来てくれたね」
「当然ですよ。今日は私の助手も連れてきました」
 籠本寺が大森を軽く紹介してから、大森が挨拶をした。
「大森です。いつもはカウンターをしています」
「では、私は失礼します」
 大森の挨拶が終わると、女性が立ち上がり、部屋を後にした。
「さあ、崩して崩して。楽な座り方で」
「ありがとうございます」
「それで、本題の方だが……」
 宮口はいきなり本題を切り出した。
「ええ。今、お孫さんはいませんよね」
「ああ。今は……十時半か。孫は十一時には帰ってくるが」
「時間は大丈夫ですね。では、始めましょう」
 早速、籠本寺得意の話術で孫の事を色々と聞き出すと、はやくもはじめの結論を出した。
「要するに、お孫さんは中学受験に失敗されてから暴力を……」
「ああ」
「単純に考えると、心理的なショックが加わった事によりますね。でも、中学受験のせいだけではない」
 籠本寺が言うと、大森も続ける。
「お孫さんが暴力を振るわれるようになったのは、もしかして入学してからでは?」
 すると、宮口は目を閉じ少し考えて、地動説を発見した時のガリレオのようにはっと目を開いた。
「そ、そうだ」
 その一言を聞いた瞬間、二人の目は確信を得た。
 二人が同時に腕時計を見ると、時刻は十一時七分。もう孫が帰って来てもいい時間だ。
「そろそろですね」と、大森が言うと、宮口の身が少し締まった気がした。
 二分も待たないうちに、遠くからガタッとドアの開く音が聞こえた。そして、その後に「はる、ただいまくらい言いなさい」という声と、「うっせーよ」と怒鳴る声が続けて聞こえた。
「じゃあ、呼んでくるからよ……」
 宮口が言った言葉には恐怖が感じられた。これは安心させなければという考えが働いた籠本寺は、
「僕が行きますよ」と一言言って、立ち上がった。
 障子を開けて部屋から出ると、そこには宮口の子供であろうさっきの女性が立っていた。
「本当に申し訳ありません。こちらです」
 女性のエスコートで向かったのは、階段を上って二階の一室だった。きっと女性がいなければ迷ってしまうような長い道のりに籠本寺は感じられた。