コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.14 )
- 日時: 2015/08/25 12:58
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: pKatwYmy)
8day— in the morning —
「ばっかもーん!!何で終わってないんだ、このバカ!」
バーンッと机が大きく叩かれ、怒声が部屋中に響き渡る。
そう、先生が出張からお帰りになりました、今朝。
で、先程から説教をさせられ、私はビクビクと怯えていました。
「だぁって、タクの試合があったりぃして……楽しいことだらけだったんだもん!!」
言い訳をぶつぶつと始める私なんか先生の眼中には入っておらず。
「そんなバカなこといってられっか、このバカ。そんなの、終わってから見れば良かったじゃないか、え!?」
「……こんな分厚い問題集をたったの2日でやれって言う方が可笑しいんだ、アホフレッド」
ボソッと呟く。
そうだよ。この問題集、薄く見せときながら50ページ以上あるなんて。
「誰がアホじゃ!?」
あんっ!?と反応し、私の頭をぐりぐりする。
「いったい、痛いよ!乙女に向かって暴力なんて酷い!」
「誰が乙女だ!」
はっとバカにしたような笑いをして見下すような目をする。
きぃーっ、ムカつく!
「ここにいるでしょ、か弱そうな乙女が!見えてないの、フレッドせんせー!?目が悪いんですねぇー!?」
目じりに手を置きながら言う。
くそぉ、負けてたまるか。鬼、鬼畜、バカ野郎!
「麗様、そ、そのへんに……」
俺は麗様を止めようとするが、あっけなく俺はずどーんっと弾き飛ばされる。
「うっさい、タク!邪魔よ!」
「その行動自体が乙女ではないのだ!乙女というのはな!」
それを見ていたフレッドが口をはさむ。
ああ、また始まったよ、あの説教と思いながら俺は乱れた執事服を正す。
そう、いつの間にか俺は麗様専属の護衛兼執事になってしまっていた。
「ぅ……」
説教が苦手な麗様はうっと口をつぐみ、淡々と床に正座をして、苦しそうな顔でしていた。
その様子を俺は少し離れたところで見てはぁとため息をつく。
なんでこの人は同じことを繰り返しているのだろう。
褒められるということを目指さずにこんなに毎回説教されてしゅんとなっているのだろう。
そんな麗様のおかしな行動に俺はくすっと笑ってフデリック先生を見ていいた。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.15 )
- 日時: 2015/08/28 18:25
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: pKatwYmy)
8day — in the afternonn —
「ダークゥー」
うわあああんと泣きながら抱き付いてくる麗様。
それはそうだ、あんなに長い時間頭に重たい本が数冊、両手には水いっぱいにくまれたバケツを持たされ、歩行練習を三時間ずっとやっていたのだから。
「麗様……、お疲れ様でした」
にこっと笑いながら頭をよしよしと優しく子供をあやすようにしてなでると、不思議と麗様の涙もとまる。
「鬼、鬼畜、どS〜!!フレッドのばかぁ……」
足をがくがくと小鹿のようにさせながらフデリック先生をにらむ。
「あのくらい怠けていたのだから当然の練習量だ」
ふっと笑いながら腕を組み、優雅に先ほど俺が入れた紅茶をのむ。
「フデリック先生も少しは手加減したらどうですか?」
麗様もこんなに一生懸命にやられていらっしゃったのに、あそこまでするとは。
「いいか、ハーベルよ。こいつは甘やかしたら怠けるタイプなのだ。
だから俺は麗を思って心を鬼にし、指導をしている」
じろっと俺をにらみ、自信満々に言う。
本当にそうなのでしょうか、この人の言ってること。
確かにフデリック先生の授業料は高くて授業そのもの自体もスパルタだと有名である。だが、こうしてフデリック先生の人気があるのは、それだけの成果をあげているからなのだろう。
「もう……やだよぉ、この鬼フレッドから逃げたいっ」
フデリック先生を指さしながらううっと涙をためておっしゃる麗様。
子供のように可愛らしいです、そのお姿は。
「だめだ。俺だってお前の指導は嫌いだが、あのブリリアント様から言われている」
俺だってこんな奴の指導なんてやりたくないわ。
だけど、あの日、こいつの授業をしてほしいとブリリアント様から直々に言われたときは、驚いたものだ。
「ぶ、ブリリアント様!」
俺の城に輝く人が来たと思えば、頭下げてこういうんだもんな。
「お願いだ。僕の大切な友人を教育してほしい」
「え、あ、あの……ブリリアント様、どうか頭をお上げください」
あたふたと突然の出来事に狼狽しながらも言う。
一国の次期王が、たかが上級貴族の俺に頭下げるんだから。
「君にしか担当できない友人だと思う。彼女を、僕の将来の嫁を育ててほしい」
は……?と固まったのも無理はない。そこにいた俺をふくめ、使いのものたちも硬直した。
「嫁って……約一か月後に婚約候補大会において選ばれるんじゃなかったんですか?」
そうだ。この夏が過ぎたらある大会。それは隣国であるこの国にも届いていた。ついこの間禁婚令が出されたんだから。
「僕の中では決まっているんだ。彼女しかいない」
相当惚れ込んでんな、これ。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.16 )
- 日時: 2015/09/20 10:23
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)
8day — in the night —
ということで、引き受けたのだが。
あのロマンチストで完璧人のショウ様が惚れるくらいの、それも一目ぼれする女性だからどんなにきれいでどんなにおしとやかなものかと期待を
胸に行ってみれば……これだもんなぁ。
ちらっと麗を見ると、ううっとうなりながら泣きながら当日、聞かれるであろう質問まとめをした本をやっている。
その横でいとおしそうにその姿を見つめながら立っている執事に成り果てた親衛隊長。
……こいつもか。
口には出せないだろうが、この男も彼女にやられた一人か……。
「……おら、何をぶつぶつ言っている。しっかりやれ、あほ」
はぁっとため息をつきながらぽんと教科書で頭をはたくと、
涙目でくいっとにらんでくる。
……こいつの武器はこれなんだろうなぁ。
何気ないしぐさ、言葉。
それが男を惑わしてしまうのだった。
俺もやられそうになっていた時期もあったし、この男はなおさらか。
「麗様、頑張ってください」
苦笑しながら声援を送る隊長。
「て、てゆーか、こんなの、もう無理だもんッ。だいたいなんで同じようなことを聞いてくんのッ、この問題集はッ!?」
俺にそんなバカなことを言ってくるもんだから、もう一発、はたいてやった。
すると、ひーひー言いながら問題集を解き始める。
「……」
そんな中、コンコンッとドアの叩く音がする。
その音に気付いた俺たちは、一旦、手を止める。
「どなたですか?」
ドアの向こうにいる使いの者たちに姫(仮)は聞いた。
「ブリリアント第一皇子様です」
その返答を聞くと、すぐに開けてもらうように使いの者たちに指示する。
「……元気にしていましたか、麗さん」
輝く光を放って現れた次期王。
爽やかな笑顔とともにその手にある花束は彼女のために用意したものであるから、こいつの好感度アップは相当高い。
「わぁ、ありがとうございます、ショウ様」
満面の笑顔で可愛くそれを受け取ると、慣れたように使いの者に生けるよう命令する。
このへんは嫌になれてきたなとそれを見ながら思うと、ショウ様が沈黙を破った。
「麗さん、勉強でもうお辛いでしょう。なので僕からプレゼントしたいと思います」
ニコニコと笑いながら言った。
勉強と言ってもほんの少ししかやってないけどな、こいつ。
その優しい誘惑にこいつはつられた。
「ぷ、プレゼント!嬉しいです、なんなんですか、そのプレゼントとやらは?」
ルンルンでショウ様に聞くと、ショウ様は麗に近づき、彼女の唇に人差し指を置いて言った。
その動作に真っ赤になりながら麗は固まったように動かなくなる。
「…それは明日の夜のお楽しみです。ですが、きっと貴女も気に入ると思います」
ふふっと色っぽく笑い、麗から離れていく。
その言葉を残して、次期王は麗の部屋を後にした。