コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜  ( No.23 )
日時: 2015/11/08 17:03
名前: ・ス・ス・ス{ ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)

9day —— in the night —— Someone Side

『おい、そっちは?』

レシーバーで連絡をとる。そう、俺は”黒華”の一味であった。
今日の黒華の目的物は第一皇子の刻印つまり承諾印。
うちのお嬢様がどうしてもそれを欲しいと命令なさったのだ。どうしてそんなことを命令されたのか、分からんが。

「なんとか入手。すぐそっちに……」

俺の班は実行犯を担っていた。三人という小人数だが、完璧な仕事をしていた。

「やばい、クロム、親衛隊接近してきた」
外で見張っていた一人が俺の肩を叩いて知らせる。
思った以上に気付かれるのは早かった。それもそうか、あの国内一の剣豪としらされるタクト=ハーベルの親衛隊が今回の中心の護衛だそうで。

「親衛隊に気付かれた。ルート3で脱出する。準備してくれ」

レシーバーの向こうにいる仲間にそう伝え、俺たちはその部屋から脱出した。


「……隊長!」
俺が心配しながら麗様の世話をしている時、部下のマルセルが焦りながら俺の下へ連絡を送ってくる。

「なんだ、マルセル。どうかしたか」
無線機にそう声を出して落ち着いて何事かと聞く。

「ブリリアント様の部屋のセンサーに不審な……」
「すぐ、行く」
言葉の途中だったが、何を言おうとしているかが分かった。
すぐにブリリアント様に知らせ、現場に向かう。
麗様が心配そうに見送ってくれたが、少しはご自分の体調も心配なさってほしいものだと思いながら現場に到着。


Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜  ( No.24 )
日時: 2015/11/23 15:03
名前: ・ス・ス・ス{ ◆93nWkRSozk (ID: xqGPflk1)

9day —— in the night —— 

「タクト!一体、何事だ!」

珍しく取り乱したブリリアント様が現場に一足遅れて駆けつけに来てくれていた。

「はい。荒らされた形跡はないのですが、ブリリアント様の刻印がないかと思われます」

「刻印!?あれがないと、婚約者候補を決める祭ができないじゃないか!」
まずいことになったと思う。あれがないと、一刻も早く麗さんを婚約者にしたいのにできなくなってしまう。

「分かってます。親衛隊全力を尽くし、今、捜索中ですが、見つからないのです。私の予測ですが、黒華団に盗まれたかと思います」
彼らの手口である舞踏会や歓迎祭にみんなが気を取られているうちに目的の物を盗み、必ず何かと取引する、交渉を願う書が残される。

だが……、

「黒華団なら交渉を望むものがあるだろう?それはなかったのか?」
ブリリアント様もそれを期待していた。
なぜなら黒華団は金銭目的で盗む場合が多いからだ。金銭で解決するのならそれでいいと思ったのだろう、ブリリアント様も。

「それがなかったのです。黒華団は金銭目的ではなかったようで」
「なかった?では何のために……黒華団は」

こうなると、何をしていいのかさえ、分からない。
相手がどう出てくるのを予測することさえも考えつかなくなる。
どうしたものかとうなるが、どうすることもできず、時間は過ぎ去る。

「とりあえず、このことは麗さんにもリヒトにも皆の者にも他言しないでくれ。パーティーは中止とするが」

「分かりました。パーティー会場にいる皆さんにはうまくごまかして伝えておきます」

そういうと、俺はその言葉通り、実行し、パーティーと共に麗さんを安全な場所へと移動した。
部屋を出るときにブリリアント様がとてもお辛そうに顔を歪めていたのが、印象的であった——

Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜  ( No.25 )
日時: 2015/12/21 13:20
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)

10day —— in the moring—— 

『婚約者候補の大会は中止』

そう告げられたのは一時間前。
これまでフレッドとタクと一生懸命勉強してきただけあって、そのショックは絶大だった。
その落ち込みは自分でもわかるくらいにずどーんっと。
先ほどからタクが心配そうに視線を熱くして私を見ているのが分かる。
ちなみに斜め前にはフレッドも同じようにうなだれてしまっていた。

「……私、ちょっと出かけてくるね。いいでしょ、フレッド?」

重い空気が私にとって嫌で気分転換に外出を試みる。
タクもそうしましょうという目で訴えてきて私が外出することに賛成のようだ。

「ああ、もちろんだ。気分転換にキッフェンでも買ってくるといい」

しおれた笑顔を向けられると、なんだか可哀想に思えるが、キッフェルンかぁ、いいかもと思いながら外出目的にした。

キッフェルンというのは、現代のドイツの焼き菓子で、この世界にも伝統のお菓子として伝わっている。なんか、この世界ってヨーロッパ風のもの多いなぁなどと思いながらタクに外出の支度を整えてもらい、城を後にした。

「外に出られるのは久しぶりですね」
「そうね。この間からパーティーの準備やなんやらで外出できなかったから」

タクがそう爽やかな笑顔で話を盛んにしてくれる。
私がこの世界に来てから日数を数えていたが、もうはやくも二週間が経過していた。それに応じて春のように温かな風が吹いていたこの地域も、今では日差しが少し強くなって夏らしい気候に変化しているのを感じていた。

「麗様は、パーティー、楽しめましたか?」
「……ええ、もちろんよ」

応答が少し遅れてしまったのは、昨夜あったあの素敵な男性を思い出してしまって、またもや見とれてしまっていたから。

「ブリリアント様が麗様のおそばにいられなくて悲しんでおられましたよ?」
「ショウ様が……」

ショウ様を想うと、今の私はほんと、失礼だったな。
ショウ様は私を本当に愛してくださっているのに、私としたら昨夜の男性を少しでも思い浮かべて見とれてしまっていて。

「麗様?」
「……ううん、なんでもないの。それより早くお茶にしたいからキッフェルン、買いに行きましょう?」

彼女はいたって元気そうなので、俺は疑うこともなく、彼女についていった。