コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.29 )
- 日時: 2016/02/14 00:18
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PR3Fak4z)
10day —— in the afternoon——
「サイト様、いくらなんでも押しかけるのは良くないと思います!!」
そういって後ろをついてくるのは、俺の親衛隊のマルセル。
彼は親衛隊の中でも小柄だというが、俺の背よりは高い。そんな美少女と思わせぶりな彼と向かっているのは、俺の姉、リリーのもとだった。
ちなみにここまで俺の兄弟を知らしていなかったが、俺の兄弟は全部で五人いる。上から兄上、リリー、俺、今年生まれたばかりの双子の妹と弟。
兄上とリリーは年子だが、俺はリリーとは六つも離れていている。
メイドたちを押し切ってバンッと扉を開けると、リリーが優雅にフレッドと共にお茶を飲んでいた。
「あら、リヒト、久しぶりだわ。半年ぶりかしら」
俺がバンッと扉を開けたのにも驚かず、表情一つ変えずにそんなことを悠長に言っている。
溺愛している兄の印鑑が盗まれたというのに、こんなにも平然でいるのはやはりおかしい。
「姉さん!早く姉さんお抱えの白薔薇の会を動かせよッ」
リリーにつめかかりながらそういってみる。後ろではオロオロとしながらマルセルが俺を待っている。
白薔薇の会とは姉さんが直々に育て上げた騎士団のことだ。姉さんは武道に優れており、女の騎士の中ではその頂点に君臨している。
「いやよ。動かしてどうしろと言うの?ショウ兄様は大丈夫だとおっしゃっていたわ」
済ました顔でそんなことをいい、微笑む。リヒトもそんな顔してないで一緒に紅茶を楽しみましょうと言ってくる。
「そんなこと、していられっか。印鑑がないと、麗が」
あんなに頑張っていたのに……このままじゃかわいそうだとつぶやくようにいうと、姉は不敵に声を出して笑う。
「あの小娘ね。たかが庶民のくせに兄様の婚約者候補になろうとするなんてもってのほかだわ。早くあっちに帰ったらいいわ」
どこか遠くを見ながらそういう姉の姿は、少し嫌味っぽく感じたりしたが、認めているようなしょうがないという諦めた雰囲気も感じ取れた。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.30 )
- 日時: 2016/01/10 18:55
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)
「やっぱり姉さんがやったのか!?」
そんなことを不敵に笑いながら言う姉がやはり印鑑を盗んだ張本人だと俺は確信した。
「なんで兄様のものを盗まなきゃらならないのよ。それに兄様に迷惑をかけるのはいやよ」
はぁ?とため息をついてそうふてくされながらそういうと、俺も納得させられる。
兄が大好きな姉は兄に迷惑をかけるのはものすごくやがるだろう。
もしも意地悪を麗にするならじかに会ってさりげなくしていることだろう。
それをしないということは少なからず麗を認めているという事なのだろうか。
「……そうだな、姉さんの言うとおりだ」
ぱたんっとソファーに倒れこむように座って息を整える。かっと来て身内に疑惑をかけたのが間違いだったのかもしれないと反省しながら姉さんがついでくれたダージリンティーを飲む。
ほっとしたようにマルセルが俺の隣に座って同じように紅茶を飲み始めた。
「でも、兄様相当困っているようでしたわね。兄様が取り乱していたもの」
ほっと息をつくと、そう姉さんは切り出した。大好きな兄を思い出しながら麗への羨ましい気持ちを募らせているのだろうか。
「きっと今回で婚約者を決めになられて結婚をそのまま、行うつもりなのだわ。聞けば兄様はあの小娘にぞっこんだとか」
チラッとフデリックを見ると、不敵に笑う。さすがのフデリックも女性の権力者には弱いのか、暴言一つはかずに苦笑いしている。
「麗様はお強いお方です。まっすぐな意思をお持ちになさってる。そこに皇子様はまた惚れられていったのでしょう」
そうつぶやくと、席を立つ。聞けば、これから麗とお茶をするそうだ。
「……フデリックはどうして私には本性を見せないのかしら」
その後姿を見送りながらそうつぶやく。どうやらその言葉は俺に向けられていたようで答えを求められる。
「知らないさ。そうだ、姉さん、この前のパーティーであの人を見かけたんだけど」
パーティーで見かけた元俺たちの仲間、いや親族だったあの人のことを一通り話すと、姉さんはより厳しい顔になった。
「……リヒト、どうやら私、また城を開けますわ」
「では姉さんが行ってくれるのですね。助かります」
ええと俺に心すでにここにあらずの声で頷くと、姉さんは自室を飛び出していった。きっともう出馬の準備をしにいったのだろう。
「サイト様、ヴァーリア様はどちらに行ったのでしょうか」
「それくらい察しろよ、マルセル。決まってるだろ、隣国のプラッセさ」
マルセルを少しにらみつけると、俺たちも対策を練るために団に戻っていった——