コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.31 )
- 日時: 2016/01/11 11:46
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)
10day —— at tea-time —
『ヴォルケンシュタイン子爵、今日はこちらに何用で来られたのですか』
ショウ様はいつになく厳しい顔でそう聞かれた。穏やかな彼がこんな顔をするのは私とタクも知らない別人のようで少し怖い。
「何って観光に来てはならないんですか、ブリリアント第一皇子様」
クスッと笑いながら紅茶をのむ子爵。そのしぐさは薄気味悪いような怪しい雰囲気を醸し出している。ただ紅茶を飲んでいるだけなのに。
『観光って!?あなたはプラッセの人じゃないですか、しかも僕らを裏切った……!また何かしでかそうとしているんじゃないんですか!?』
バンッと机を叩きながらショウ様は荒々しく息を立てながらそういう。いきなりのそういった行動に驚きつつも、またショウ様の態度に驚いていた。
「落ち着いてください、皇子様。それは過去の話です。今と過去は関係ありません」
フフッと笑いながらそういって私の肩に手を回してくる。私の耳に顔を近づけると、吹き込まれるように何かをささやかれる。
「……麗様、皇子の婚約者になるのはおやめください。皇子の婚約者はつらいですよ」
低くて色っぽい声に私は敏感になってしまう、いやそうなるざるおえないくらいに美しい声だったのだ。
『麗さんから手を離せ!!』
真っ赤な顔でショウ様はそう叫ぶように言った。
ふふっと笑いながら子爵は私から手を離してその薄い唇をまた開ける。
「油断をしていると、僕にもっていかれますよ、皇子」
最後の一口を飲むと、私の頬に軽いキスをして立ち上がる。
「麗様、ich denke immer an dich。いつか迎えに来ます」
私に指を向けると、そう妖艶な笑みを乗せながらそういった。私には意味が分からなかったが、ショウ様は分かっているようで真っ赤な顔で拳を握っていた。
『子爵、貴様!!』
つめかかろうとした時、タクが急いでショウ様を止める。子爵はその間にその場を去っていった。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.32 )
- 日時: 2016/01/28 22:24
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PboQKwPw)
10day —— at tea-time —
「今しがた、ミッシェル様が来られていたようですが、彼とは久しぶりですね」
重い空気の中、ふらーっと明るい空気とともに笑顔を乗せながら入ってきたのはフレッドであった。
「フレッド」
ぁっと彼が来たのを少し嬉しく思いながらも、ミッシェル?と聞きなれない名前が出てきて頭に疑問を浮かべる。
もしやミッシェルとは子爵のことなのだろうかとふと考えながらも、ショウ様の様子を伺う。ショウ様は落ち着いたようで息を整えながらその美しいお顔にしわを寄せて紅茶を飲んでいた。
「……あ、ブリリアント様もご一緒でしたか」
「ああ。子爵とは先ほどまでお茶を共にしていたんだ」
いらだった様子ではないのだが、どこか苛立ちのある声でそういうと、カッチャと普段の彼のマナーではありえない行為だったが、音を立ててカップを置く。それは、斟酌も考えられないほど、彼にとってはとても憎たらしいことだったのかそれとも焦っているのか、どちらの感情としてもとれるようなそんな行動だった。
「皇子様は、まだミッシェル様をお怒りなのですか」
その様子を見てフレッドは小さくため息をついた。彼の表情はどこか呆れたような疲れたようなそんな雰囲気を醸し出している。
「あの件はもう許したと言っていますが、どうしても彼と会いますと、あの時の感情がよみがえってしまうのです」
ほっと息をついてはにかんだ皇子はもう普段の落ち着いた彼に戻っていた。今までの彼は別人だったようにそこにはいなくなる。
——はて、彼の言う『あの時』『あの件』とは何のことなのだろうかとまた私の頭に疑問が浮かぶが、私にこの場であきらかに話に上がらないということは言いにくいことなのだろう。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.33 )
- 日時: 2016/01/31 13:06
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PboQKwPw)
10day —— at the night —
疑問と不安を持ちながらも、ショウ様がいる前ではフレッドにもタクにも聞けず、お茶の時間は過ぎていった。その後もショウ様とフレッドは会議があるとかなんとか言って、逃げるように私の部屋から出ていった。
「ねぇ、タク」
そこで一人、事情を知ってそうなタクトに聞くことにする。彼は気まずそうなバツが悪いような顔をすると、返事をする。
「はい、なんでしょう、麗様」
あくまでも彼は知らないふりをしながらそう聞いてくる。知ってるくせにと思いながらも、例のことを口にする。
「それは……皇子様から直接聞いた方がよろしいんじゃないかと俺は考えます」
「……じゃ!じゃあ!あの時、なんだかわけわからないこといったじゃない、子爵様。あれはどういう意味なの?」
確かにと思い、ショウ様がはなしてくれるのを待った方がいいかなと考え直す。そして最後に尋ねたかったあの意味を教えてもらえないかと頼む。
「あ、あれは……『いつもあなたを想ってます』っていう意味です」
少し顔を赤らめながらそう教えてくれた。
い、いつもっと衝撃を受けながらいつの間にか子爵が私に恋愛感情を抱いていることに不思議に思う。
まだあったことは二回しかないのに……。本当にこの世界の人は、人を好きになるのが早すぎるよと思いながらタクと同じように顔を真っ赤にさせながらその日を終えたのである。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.34 )
- 日時: 2016/02/07 10:57
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PR3Fak4z)
10day —— at the night —
その頃、プラッセに向かっていた白薔薇の会と第一皇女ヴァーリア=カルバーク=リリーは、ある人と遭遇していたのである。
「ごきげんよう、リリー」
フフッと笑いながら馬を乗っていた女性——深く帽子をかぶっていて目元が見えなかったが、独特の雰囲気と輝く長い金髪と特徴のある色っぽい声で私は彼女を理解した。
「その声は、かの有名なエリザベータ =ノイベルト=キイ殿とお見受けする」
同じ立場であるし、一応エリザベータとは仲良くしておきたい。なぜならお父様が今、国交を結ぼうとしているもう一つの国、シュヴァルツである。
その国ではよく鉱石が取れるため、新事業を展開するために、お父様は国交を結びたいとおっしゃっていた。
「堅苦しいですわ。王族同士なのですからキイとお呼びください」
帽子を取ると、ラズベリー色の彼女の独特の瞳が露わになる。白い肌に金髪、綺麗な瞳、細い体……どれをとってもこの世界で美人と評されている彼女の容姿は女である私にも羨ましく思う。
「……ではキイ殿、ここはプラッセの国境、なぜそなたがいらっしゃる?」
シュヴァルツとプラッセではかなり国同士がはなれており、めったに貿易商人たちもお互いの国に向かわないとかという噂が立つほどの距離だ。
それなのに皇女自らがプラッセから出てきた方向にいるということはおかしい。
「……私の耳にも入ったのですわ、完璧な紳士で知られる貴国の皇子が婚約者を選ぶと。なのでわたくしもアリーセと共に参加してみようかと思いましてね」
話によれば、プラッセの皇女と共に参加しようと思い、誘ったところだと。いつの間にか彼女とプラッセ皇女、ミリア=プラッセ=アリーセと通じていたらしい。
「……そう。でも今、プラッセは治安が悪いとか。だからキイも気を付けなされ」
お忍びでただ誘いにくるということは、私達皇女同士ではありきたりのことだ。お互いを高めるために誘うことがしばしばあったりしてこの私も以前、隣国のパーティーに参加するとき、キイを誘ったことがある。
だから私はこのことを素直に納得してしまい、彼女の野望なんてものは見抜けずに彼女を見逃してしまったのである。
まさか純粋で無知な皇女とまた知られるキイがあんなことを考えていたとは——