コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.37 )
日時: 2016/04/06 14:14
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PR3Fak4z)

11day —— in the afternoon —

 ここがプラッセかと隣国に入ったという証の門をくぐり、わぁーっと子供っぽさを残した彼女はあたりをキョロキョロと見回した。


 「会長、ここは何度も来ていますが」

どの国に行っても何度も来たこともあるくせに初々しい態度をとるのはいまいちわからないと、白薔薇の会のメンバーの一人、イーナ = ブレヒトはため息をついた。

 「いいのよ、初心に戻りたいの」

ふんっと顔を背け、そんなことをいう我らが麗しの会長は馬を拗ねているのか、さっさかと前に進めた。

 意外に立派な女に見えて子供っぽさを残しているのがこのヴァーリア=カルバーク=リリーなのだとあたらめて実感しつつ、白薔薇の会はプラッセの王宮へと足を運ぶのだった。

Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.38 )
日時: 2016/04/04 16:04
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: PR3Fak4z)

 
 「いやぁ、ようこそ、おいでくださいました、ヴァーリア殿」

そう告げるのは、プラッセ王である。
長い金髪をカールさせていかにも音楽家のようにしているこの特徴的な髪形が有名で、また強引な彼の独裁政治も有名だ。

 「こちらこそ。相変わらず素敵な国で」
今日は遊びに来ている訳ではないのでドレスではないのが残念なふりになってしまったドレスの端をつまんで腰を曲げるあの動作。
ついつい私はやってしまうのだが、ドレスじゃないとやはり格好がつかないのをなんとなくわかっている。

 「……どうぞ、ごゆっくりしていってください、ヴァーリア殿」
ニコニコと笑いながら通された客人の間。
相変わらず私達王宮の装飾と似ていると思いながらソファーに着席して、プラッセ王はまたニコニコしながらその部屋を出ていく。

あの作り笑いが嫌いだ。
なぜ、あんな作り笑いをせねばならぬ。かくいう私も若干作り笑いになってしまったが、腹の底ではこんなにも嫌いなのに。

 「笑顔を見せるわけが良くわらかない」

 「ヴァーリア様」
はぁっとため息をつきながら今後の予定を確認をしながら珈琲を飲む。

 「だってそうであろう?私らを嫌っているくせにあんなにきれいな笑顔を見せてくるなんて」

確かに笑顔が戦争などの争いを止めるとは聞いているが、あんな気色悪い作り笑いの塊を見せられてしまったら、こっちとしてもあっちにしてもつらいだろう。

 「これもそれもお互いのためなのです。しょうがないですよ、ヴァーリア様」
肩をすくめながらプラッセ皇女とあの男の関係を載せた資料をくれる。

Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.39 )
日時: 2016/06/18 17:53
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: 40QPO6LY)


 「しかし…、やはりまだ関係は続いていたとはな」

ぱっと読み終わった書類を無造作に投げ捨てると、冷えた目でそれを見つめた。
 
 「あの男は相変わらず危険だ。私の妹をたぶらかした罪は大きいぞ」
 
そうショウ、リリーの後にはもう一人、今は亡き皇女がいた。
病弱な彼女は最後に愛した男、それが

 「ヴォルケンシュタイン子爵はリア様のことを悪用したと聞いています。それは真だったのですね」

「そうだ。あの時、しかと私は聞いたのだ。ヴェルハントの言葉を」
うむーっとうなりながらコクコクと頷いて言う。

「我が妹、テルジアを生涯大切にすると。しかし、その言葉は裏切られたのだ。彼はもうすでに婚約していたのだから」

「許せぬ話です、まったく」

あまりにショックでその愛を糧に生きていたという皇女リアはモルヒネで自殺してしまったという話である。
それはこのライト国国民であれば、誰もが知る悲劇であった。

「そのアイツが、また悲劇を繰り返そうとしているのかそうでないのか、微妙だが、アリーセに取り入っていたとはな」

はっと彼女は鼻で笑いながら、席を立つ。

「アリーセに少しあっていこう。話せば何か分からるかもしれない」
しかし、正直に話してくれるのか、分からないがな……と呟きながら彼女は合図を送り、部屋を案内してもらう。