コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Rain ( No.2 )
- 日時: 2015/04/15 22:00
- 名前: 逢逶 (ID: 6nOSsJSp)
- 参照: http://0ja.jp/song/A2002071710.html
episode1
title 愛してると言えない
別れてすぐに会いたくなるのは貴方のことが好きだから。
貴方は私じゃない人のところへ。私は貴方じゃない人のところへ。
もうずっとこんな関係が続いている。
私も貴方も既婚者。
貴方と出会ったのはとあるレストラン。
私は夫と来ていて、貴方も奥さんと来ていて。
お互いに一目惚れだった。
夫との関係は結婚二年目には冷め切っていて、だけど別れてくれないのは夫が私を愛しているから。
貴方とトイレで電話番号を交換して…、そういう関係はあっさりと作られた。
「…ただいま」
家に帰ると、夫が不機嫌そうな顔でソファーに座っていた。
「…」
「…どうかした?」
「俺、お前と別れなきゃいけねーの?」
「…なに、言ってるの?」
今にも泣きそうな夫は、立ち上がって私を抱きしめた。
夫の腕の中が落ち着かないのは貴方の体温を覚えているから。
「…俺は、こんなに愛してるのに。お前は…、俺じゃない奴を見てる」
バレてる…?
平静を装って、夫の背中に腕をまわす。
「好きだよ…?私もちゃんと好きだから」
愛してる、とは言わない。
貴方だけを愛してる。
「…俺と別れて?」
「…ど、うして?」
「お前は本当に好きな奴と一緒になって…、幸せになって」
「…」
揺れる瞳はまだ私を必要としていて。
今更だけど胸が痛んだ。
「…ごめんね」
私はそう告げて家を出た。
夫の最後の悲しそうな表情が胸から離れなくて、過ちの大きさに気づいた。
どうして愛してあげられなかったんだろう、と悔やんでももう遅かった。
私の足はフラフラとあのレストランに向かっていた。
夫との思い出の場所にでも来れれば良かったんだけど、私はそんなに良い人じゃない。
どうしたって想うのは貴方だけ。
レストランに入り、窓際の席に座った。
貴方がいればどれだけ嬉しいだろう、そんな祈りに近い想像。
注文もしないでただぼーっとしていた。
「なんで…?」
その声に驚き、横を見ると…
…貴方がいた。
咄嗟に抱きついた。
貴方の温もりは出会った頃からずっとそのまま。
私を愛してくれてる、って実感できる。
「…会いたかった」
「私も」
涙が溢れ、それを拭うのは貴方の指先。
なんて幸せなんだろう…。
一目も気にせず力いっぱい抱き合った。
一旦落ち着き、席に座った。
周りの目も今は気にならない。
「…私ね、夫と別れる。…別れることになった」
「うん…、俺も別れた。関係、気付かれてた」
「…うん」
「俺たちさ、結婚しようよ」
「今はまだ…。好きだけど…、愛してるけど…また誰かを好きになったら怖い」
貴方以外を好きになることはこの先無い。
でも…、私は夫がいるのに貴方を好きになった。
だから貴方が夫になったら他の人を好きになるかもしれない。
「…俺のこともっと好きにさせる。俺はこの先お前以外を好きになることは無い。だけど…不安なら恋人から始めよう…?」
私は頷いた。
罪と代償。
だけど手に入れたものは大きい。
貴方と他人の目を気にしないで、手を繋いで外を歩ける。
こんなに幸せなことはない。
だけど不安な気持ちは、二人の心にあって。
…これから、お互いを一番としっかり言えるようになる日まで。
〝アイシテル〟が形になる日まで。