コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 初恋?何それおいしいの? ( No.1 )
- 日時: 2015/04/18 21:51
- 名前: まかろん (ID: syFyy808)
4.7
明日から橋上中学に入学する。
先週届いたばかりの制服を着るのはとても楽しみ。
入学式、お母さんきてくれるかな。きてくれるといいな。
部活はどうしよう? 私には到底運動部はできそうにない。
「読書部」とかあったらいいのに。 ・・まぁあるわけないか・・。
友達はできるかな。こんな私にもできるかな。
心配事はたくさんあるけれど、今日はこれで。 早く寝なきゃ。
パタン
「おはようございます。」
「おう おはよう。制服、凄く似合ってるね。」
父がソファで新聞を読みながら言う。
「ありがとう。」
私は精一杯の笑顔で言う。
「あらおはよう。今日から中学生ねぇ。」
母が食器を洗いながら言う。
「うん。とても楽しみ。」
こちらも笑顔で答える。
「ご飯できてるからね。」
「うん。いただきます。」
「そうだ。ご飯食べたらみんなで写真でも撮るか。」
「いいじゃない。3人で撮りましょ。」
「うん。撮りたい!」
「薫、もうちょい母さんによって。そうそう・」
「よし。いくか。」
「みんな笑ってー」
パシャ
これが私の中学生活最初の朝。
「いってきます。」
両親の明るい声に送られ、新しい白い靴で歩きだした。
新しい制服、新しい学校、新しい景色・・・ 。
何もかもが新しい。 けど、唯新しいってだけでしょう?
私は決められた通学路を歩きながら、そんなことを考え始めた。
特に私の生活は変わらない。 部活は文化部に入れば問題ない。
私にとって学校は唯の休憩場所。
両親に向ける愛想笑いに疲れ、最近そう思うようになった。
そりゃ、最初は友達と上手くやっていこうと思った。
けど、上手くやってどうするの? 私に何かメリットある?
彼女たちから得たものなんて、精々ドラマの内容やアイドルの情報。
そんなもの、私に必要ない。
私が彼女たちを避けるようになると、簡単に離れて行った。
ほら。友情なんてものも無い。
不思議と喪失感はなかった。 あれだけ一緒にいたのにね。
私に友達は必要ないってわかった。
それからの私の毎日はカラフルになった。
友達に話題や内容を合わせなくていい。無理に笑わなくていい。 開放感に満ち溢れた。
私は、自由になったんだ。
学校は私の休憩場所。唯一私の素を出せる場所。
中学でも円満な学校生活を送れるようにしなきゃ。
そう思っているうちに、橋上中学が見えてきた。
「おはよう! 今日から1年3組の担任になる萩原耕一です! みんなよろしく!」
『ハギワラコウイチ』 次、私が愛想を振りまく相手か。
短髪、発達した胸筋、太い腕・・ スーツの上からでも筋肉がわかる。
やりやすい担任でよかったと思った。 こういう熱血教師は大抵にこにこしていれば、普通に明るい生徒だと思われる。
「よし、じゃあ最初だし自己紹介からいくか!」
自己紹介。友達いらない私には関係のないことに思えるが、実は割と重要。
普通に明るい生徒と思われるのには、ポイントがある。
「まずは出席番号1番、稲沢あいさん!」
「はい!」
私は出席番号22番。よって窓際の席になっている。
今日は日差しがあって暖かい。私の好きな春の気温だ。
まだ私の番は来ないし、少し眠るのもいいかも。
「・・・はい。よろしく!えー次、出席番号3番、霧島隼君!」
「・・・」
「あれ?休みか?そんな訳・・・」
そのとき、寝ぼけ頭で廊下からものすごい速さで走ってくる音を聞いた。
瞬間
「すみませんっ 遅れました!」
勢いよく開いたドアの先に、息を切らした男子生徒がいた。
さすがの私も目が覚める。
「ほほーう。初日から遅刻とは、いい度胸だなぁ?」
「すみません。アラームに気づかなくて・・」
男子生徒は申し訳なさそうに俯いた。
「言い訳結構!早く席に着け!」
「・・はい。」
なんだか騒がしい人。その人の第一印象はそれだった。
「えーで君が霧島隼君か。遅刻クン?」
「う・・はい・・・。」
クラスに笑いがこぼれた。
「じゃ今自己紹介やってるから、どうぞ。」
「え、自己紹介・・?えー・・えっと、霧島隼です。えっと・・あ、趣味は読書です。よろしくお願いします。」
「お前、遅刻してきたのに読書が好きなのか・・意外だな。」
萩原先生の言葉にクラスに笑い声が広まった。
ま、んなことはどうでもいい。大事なのは私と内容が被ったことだ。
どうしよう。いや、でも私最後らへんだから自己紹介の内容なんて、みんな忘れて・・
る訳ないか。
あぁー・・どうしよう・・
『絵を描くのが好き』? いやいや私一切絵描かない。絵心ゼロ。
じゃあ『寝るのが好き』? いやいや何だそれ。
ああもうどうしよう!私は心の中で頭を抱えた。
いきなり現れた遅刻ボーイにこんなに悩まされる羽目になってしまうとは・・。
いかん 頭がパニック状態。落ち着け俺! だめだ落ち着いてない。 だあぁ・・。
「私」は普通に明るい生徒にならなければ・・!
そうこうしている間に私の番が来てしまった。
「はい。次、出席番号22番。山口薫さん!」
あぁもうこれでいくしかない。
「はい。山口薫です。趣味は読書です。 霧島君と同じですね。 1年間よろしくお願いします。」
私は早口にならないように、たっぷり間をとってはっきり発言した。
もちろん最後には笑顔をつけて。
そう、ポイントとは。
1.文化系女子感を出すこと
2.ハキハキと発言すること
この2つ
やっぱり1の条件を満たすには『読書好き』は外せなかった。ま、本当のことだし。
それに、文化部に入れば1はOK
そして、あえて被ってしまったことを朗らかに言い、最後の笑顔で明るい生徒をアピール。
ふっ・・完璧だ・・
私は心の中でガッツポーズをする。