コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 初恋?何それおいしいの? ( No.31 )
- 日時: 2015/07/11 20:12
- 名前: まかろん (ID: syFyy808)
「うっ…。」
穏やかな昼下がり。校庭の笑い声を遠く聞きながら、橋上中学校校長の私有地(?)に大の字でねっ転がる俺、霧島隼である。
この度2度目の強烈なパンチを食らい、腹っつうか内臓が死にそうである。
…男だからってもう少し労わってくれてもいいのではないか。
しかもあいつ、謝らないからな!ただ俺を見下した目しかくれない。
起き上がろうとしてみたものの、腹の痛みが急激にきてあえなく断念。
こうしてねっ転がっているわけである。
「はあ…。」
まだ腹の痛みは治まりそうにない。しばらくここで転がっているか。
ちくちくとした芝生の上をごろごろ転がってみる。
うん。痛い。
あほか俺…。
というかそもそもおかしいんだよ!
なんで会って間もないひとにこんなに殴られなきゃいけねえんだよ!!
俺は紳士的に相談にのってあげただけなのに…。
そうだよ俺はおかしくなんかない。おかしいのはあいつだ。
そうだよ俺はあほの子なんかじゃない。そう…ソウダヨ…。
芝生の上で転がって痛い思いをした俺はあほじゃないと言い聞かせた。
「おお?どうしたんだね、君?」
突然上からにゅっと顔が出てきた。
「うおおぉ!?」
あわてて起き上がるが、
「うっ、」
くそ腹が痛い。やっぱり俺はあほの子なのか。
「うぅ…。」
涙目になっている俺に、
「大丈夫かい?」
と手を差し出してくれた。
「ああ、どうも…。」
まだ腹は痛むが、人が来てしまってはいつまでも芝生の上で、のたうちまわっているわけにはいかない。
「ん?」
ありがたく手をつかむと、その手にはなぜか軍手がしてあった。
わざわざ昼休みに雑草取りでもするのか、酔狂な奴だなと顔を上げると、
そこには老けたおっさんの顔があった。
いや、もしかしたらおじいちゃんかもしれない。
顔に割としわがあり、老けてそうなイメージだが、麦わら帽子にTシャツという、なんとも若々しい恰好をしている。
いやいや季節考えろよ。まだ春だぞ?
そこまで気温高くなかったはず。 こやつ何者。
「あれ、僕のことわからないかな?」
頭にはてなマークがいっぱい浮かんでしまったのが見えたらしい。
季節外れの活発なおじいちゃんは、少し困った顔をした。
「ど、どちらさまで?」
俺がおそるおそる聞くと、
「あ〜やっぱり。僕は校長だよ。入学式で壇上に立って挨拶したんだけどなあ。」
「!!」
はてなマークからびっくりマークに変わった。
こんな季節外れの活発なおじいちゃんが校長であってたまるか。
「あれ?信じてない…。」
そりゃそうだろうよ。
心の中でつっこんでみた。
入学式…校長…? さっぱりおぼえてない。 まず記憶がない。
「えー、確かここに首から下げてるやつが…。」
そういって軍手を脱いでポケットの中を探し始めた。
なぜか飴やキャラメルしか出てこない。
もうすでに信用を失った自称校長は、尻ポケットを探す。
「ああ、あった!あったよ よかった〜。」
ネームプレート的なものを大げさに掲げた。
でもおかしい。首から下げるもののはずなのに、紐がついていない。
「ほんとによかったあって。 もうこれ以上なくしたらどんな目に遭うか…。」
今度はぎゅっとネームプレートを抱く。 このおじいちゃん大丈夫かなあ…。
「ほらっ、ちゃんと校長だよ!」
満面の笑顔で俺にネームプレートを見せる。
少ししわができているが『水原 俊夫 橋上中学校校長』と書かれている。
「ちゃんと」の部分がとても引っかかるが、まあ本人がここまで言うのだから、校長なのだろう。
俺は無理やり納得した。
ところで、
「紐、どうしたんですか?」
「ああ!あれ?!うそ、どこ行った??!」
またあわててポケットの中を探し出した校長に、おもわず吹いてしまった。
「あはははは、いでででで。」